――冒険者区、中央通りから外れた路地。

フィンクス

で、あの剣って
結局何だったんだ?

シェルナ

あー!
そうそう。
ランディが使ってた
黒い剣の話だよね?

ランディ

これのことか?

 ランディが質問の確認をするように、腰に帯びている鞘に手を置く。フィンクスとシェルナが同時に頷いて、酒場に向かう全員が耳を傾けた。

ランディ

魔気を佩(ハ)かせる――
以前これを見た奴は
そう言ってたな。

リュウ

魔気を佩かせる?

シャセツ

……どうゆうことだ?

ランディ

おっと、
あんた喋れんのかよ。

シャセツ

当たり前だ。

ランディ

まぁいいか。
エンゲージコアに溜まる魔気を
武器に宿せたらどうなんだ、
っつー感じでやってみたら
出来たんだよ。

 軽い口調で凄いことを言っているランディ。コフィンですら見た事も聞いた事もない戦闘手段だからだ。

ハル

やってみるっすって
やったら出来たんすか?

ランディ

まぁな。
だけど……

ダナン

だけどなんなんだ?

 答えを急ぐダナンの声の後、ランディは腰に帯びた鞘から剣を引き抜いた。



 皆の目に飛び込んできたのは、ボロボロになった剣身。無数とも言えるヒビに声を失った時、その剣は砂のように容易く形を変え、地面に散らばっってしまった。

ハル

えっ!?
け、剣が……

ランディ

そーゆーこった。
副作用か何か知らねーけど
佩かせる剣はすぐにこれだ。
おそらく魔気の力に
耐えられなくなるんだな。

ユフィ

なるほど。
で、今回の魔気は
迷宮からずっと
佩かせていたわけ?

ランディ

そうだ。
俺の切り札
みたいなもんだからな。

コフィン

アリスが言ったように
私の剣は低層でも充分
戦える強度を持っていました。

アデル

すごい威力ですね。

ロココ

あれだけの反応ってことは
相当の魔気を溜めていたって
ことですよね?

ランディ

ああ。
って、ロココじゃん。
久し振りだな。

ハル

おや、
2人は知り合いだったんすか?

ランディ

まぁ顔知ってる
くらいだけどな。

ロココ

お、お久ぶりです。
これからよろしくお願いします。

シャイン

なんか怪しいわね。

ロココ

何も怪しくないです。

フィンクス

で、
どこで知り合ったんだ?

ランディ

訓練場だよ。風呂場な。
俺、ロココが女と思って
脱衣室ですげー驚いたわけよ。
そしたら……

ランディ

って、ロココも同じで
俺が女だと思って……
っつー感じだな。

ロココ

あの時は本当に驚きました。

ランディ

俺は女に間違えられるのは
むかつくけど、
あの時ばっかりは
笑い飛ばしたっつー感じだな。

シェルナ

それはウケるぅ~♪

 もうすっかり溶け込んだランディは、笑みを浮かべながら肩を並べ歩く。



 結局、脱線してしまった魔気の話は、現在研究中らしい。ランディはリスクも承知で使用しているとのこと。



 その件に関してコフィンからは、口外禁止とメンバーに伝えられた。

 ~兆章~     106、魔気を佩く

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