Wild Worldシリーズ

レダ暦6年
星に願いを

2

 

 

 

 あたりまえのように 君はそばにいた













 ミカエルの丘から見える満天の星空は世界一だと思う。


 数年前にある事情で星の研究は封じられたが、その時はこっそり続けようとしていた。

 しかしフラウが一緒についていたことから、彼女のことも考えて控えていた。



 研究ができなくとも、この場所は世界一だ。

 世界一の場所から星空を眺めているだけで満足していた。




 だが、時代は変わろうとしている。


 先日アーチェが持ってきたレダ王の手紙にはこうあった。

レダ

長らく待たせたけど、議会でやっと星の研究について取り上げることが出来た
何かしら実績を上げられれば、公に認められることが出来るかもしれない
今は試験的期間だから、研究をしても罪に問われない

 朗報だった。

 ケルトは、はやる気持ちを抑えながら、早速しまっておいた道具を再び取り出した。

 埃は被っていたが丁寧に扱っていたお陰か道具もまだ生きている。

 ブランクはあったが体が覚えていて、てきぱきと望遠鏡を組み立て、配置を調整し、作りかけの星の地図を眺め、夜になるのを待った。









 アーチェが買い物で街に出ると、たくさんの顔見知りに声をかけられる。

 社交的で明るい性格の彼女に、周りの人々も明るくなれるのだ。

 華やぐ商店街に、更に花が咲く。

アーチェ

おばちゃん、お魚もうちょっと安くならない?

うーん。アーちゃんにはいつもお世話になっているからねぇ
今日だけオマケだ

アーチェ

やったー! ありがとう、おばちゃん!

今日だけ、といいながらいつもオマケしてくれるこのおばちゃんが好きだった。

それから、八百屋のアンちゃんも、アーちゃん見たらきっと負けてくれるよ
行っといで

アーチェ

ホント?
じゃあ、八百屋さんにも行ってみるよ

 ここのおばちゃんと八百屋のお兄ちゃんがお互いの客寄せをしていることを知っていた。

 分かっているが、損をするわけでもないので素直に騙されておく。


 案の定、八百屋のお兄ちゃんもトマト2個もオマケしてくれた。

 おばちゃんたちが群がる中から、わざわざアーチェのほうに寄ってきてまでオマケしてくれる。

 それを見ていたおばちゃんたち全員にトマトのオマケをせざるをえなくなったが、売り上げは好調だとお兄ちゃんは笑う。

 他にも小麦粉を購入し、これも少し割り引いてもらった。


 得した気分で家路に着く。今日の夕食はどうしようか。






 遠くから、そんな姿を見つめている影に、アーチェは気付くことはなかった。









  

 この空に、どれだけの星があるのだろう。

 考えるだけでわくわくする。

 季節ごとに見えてくる星が違うと、何となく気付いていた。


 星の地図の書き方を変えなければダメだ。

 きっと、星は動いているんだ。

 そういう因果関係を調べられないだろうか。

 ケルトは、時間が経つのも忘れて、陽が昇りだすまでひたすら望遠鏡を覗いていた。
















   
 

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