Wild Worldシリーズ
Wild Worldシリーズ
レダ暦21年
朧月夜
2.病気
今日も、いつものようにルカに会いに来た。
コールにとってそれは日課で、呼吸と同じくらいのことだった。
しかし、今日はどうやら様子がおかしい。
ルカね、高熱になっちゃって……
ルカが病気で寝込んでいる。
ルカは体が弱いほうではあるが、寝込むほどのことは今までにはなかった。
エメラルドの住人は皆身体が丈夫だから、”寝込む”なんていう言葉、知っていても使ったことはなかった。
会わせてもらえませんか?
病がうつると困るから、と渋る母親に、どうしても心配だからと頼み込んだ。
昨日まで一緒にいたのに、こんな突然病気になるなんて……
信じられなくて、半信半疑で、だけど母親の様子からすれば嘘とは言いがたい。
なんとしてでも、一目ルカに会いたい。
何とか家に上がらせてもらい、そうしてルカの部屋に行くと、やつれきったルカがベッドに横になっていた。
汗をかき、呼吸も乱れ苦しそうだ。
いつものルカじゃない。
ルカっ!
コールは慌てて彼女の傍により、その手を取った。
信じられないくらいに熱かった。
ルカ、ルカ、大丈夫?
必死に声を出す。
心配で、心配で不安で仕方ない。
だけど、こんなことくらいしか出来ない自分がもどかしかった。
……誰?
誰か、いるの……?
何とか紡ぎだされた言葉でそう聞かれたことに、コールは少なからずショックを覚えた。
ルカは、高熱のあまりほとんど目が見えていなかった。
そして、音もあまり聞こえていない。
触覚だけは多少残っていたので、コールに手を取られたのは分かった。
……苦しい
ルカがうわ言のように呟くと、コールはいても立ってもいられなくなった。
ルカの為に何かをしたいのに、何をすればいいのか分からない。
胸が苦しくなる。
とりあえず汗を拭いてあげようと、額に当ててあったタオルを絞り、顔を拭いた。
ルカ、大丈夫? ルカ……
そんなふうに言うしかできない。
片手はしっかりとルカの手を取っていた。
こうすることで、元気な自分のパワーを少しでも分けて上げられたらいいと思った。
コール……なの?
いつも大人びて冷静なルカにしては、余裕のない声だった。
ルカ、声出さなくていいよ
つらいんでしょう……?
コールは泣きそうになった。
何も見えていないはずなのに、ルカはコールの表情を汲み取り、安心させてあげるように微笑んだ。
そんな彼女に、胸が締め付けられそうなほど切なくなる。
ルカ。ルカ。
元気になってよ、ルカ。
コール君、ありがとう
今日はもういいわ
また元気になったら遊びにきてね
そろそろ限界だと感じたルカの母親がやってきて、コールに呼びかけた。
だけど、コールは動かない。
何も出来ない。
分かってはいるけれど、素直に帰りたくなかった。
だって、ルカがこんなに苦しそうなのに……
傍についていてあげたいのに……
ね
諭すように言われると、泣きそうな顔で、コールはしぶしぶ頷いた。