そうつぶやいたのはシェルナ。コフィンが本当にペンデュラムエリーのメンバーなら、ただランディを見殺しにしてしまう。それに、他意があったとしても、これ以上はやり過ぎだと考えていた。
隣にいるアデルは、手を出してはいけない雰囲気の中で見守っていた。だがランディの傷が浅くない事を見て、手当をしようとランディに近付こうとする。
これ以上はどんなつもりでも
やりすぎ、止めなきゃ。
そうつぶやいたのはシェルナ。コフィンが本当にペンデュラムエリーのメンバーなら、ただランディを見殺しにしてしまう。それに、他意があったとしても、これ以上はやり過ぎだと考えていた。
隣にいるアデルは、手を出してはいけない雰囲気の中で見守っていた。だがランディの傷が浅くない事を見て、手当をしようとランディに近付こうとする。
来んじゃねーつーの。
左拳を地に押し当て傷ついた脛で立ち上がるランディ。脛部からの出血が更に勢いを増している。激痛が押し寄せてるはずだが、気合いと根性でねじ伏せる。探し求めていたペンデュラムを前にして、弱気を見せるなどランディの辞書にはなかった。
中途半端に踏みつぶされた虫は
足掻くものですからね。
コフィンが構えないまま前進し、その姿を見下ろす様に微笑を浮かべる。
大量の汗を流すランディは、肩を大きく上下させ息をしている。コフィンは構う事なく前進を止めない。お互いの剣の間合いにまでもうすぐという所まで近付いてきた。
やりすぎっす!
もうやめるっすよ!!
ククク。
私の正体を知ったからには
自分達の身も心配した方が
よろしいのでは?
すげぇな。
あのコフィンの剣撃を
受けるなんて……
いやそれどころか
そのコフィンの剣が
完全に折られてるぞ。
コフィンほどの冒険者が
簡単に折れるなまくらを
持ってるわけがないよな。
コフィンの剣は
9階層の敵も
相手に出来る代物だ。
…………
一体どうやったら
そんな事が出来るっすか……
あ、ああ……
ロココ、どうかしたの?
魔気の反応です!
ロココの言葉に、何処か違和感を覚えていた全員が認識する。この不快なものが沈殿したような感覚。――そう、迷宮に漂う魔気だ。
何なのあれ!?
ランディの長剣が真っ黒に染まっていた。
迷宮の奥底の闇を抱えるような黒。吸い込まれそうな感覚に、ロココは尻もちをついてしまった。
形勢逆転のようだな。
おい、てめぇ、
なんか言うことあるかよ。
武器に魔気を……
初めて見る戦い方です。
そんな分析は墓場でしな!
ペンデュラムのこと
吐きやがれっ!!
何も言えません。
ぶった切られなきゃ
分かんねえのかてめぇわよー。
口を割るのは敗者の方です。
つまりあなたの方ですね。
一瞬で間を詰めたコフィンは、ランディの左腕を叩き、武器を落とさせる。
それから人差し指一本でランディを押すと、ランディは力なく後ろに倒れた。