どうしてもわからないの……
夜分遅くに突然のLIMEでごめんね。
今週の日曜日僕の家で勉強会をすることが急に決まっちゃって……、
もし良かったら学年女子一位の古川さんにもぜひ来てもらいたいんだけど、どうかな?
メンバーは僕を含めた優香ちゃんと健太郎の三人を予定しているんだけど。
ごめんなさい。
その日はちょっと叔母さんにお手伝いを頼まれていて……。
そうか……残念だけどそれなら仕方ないね。
本当にごめんなさい。
でも、学年男子一位の宮村君がいれば充分なんじゃないのかな?
いやいや、
とはいっても男女総合じゃ古川さんの足元にも及ばないし……。
そんなに謙遜しなくてもいいのに。
宮村君は勉強だけじゃなくてスポーツも凄いし、きっと何でもそつなくこなせるのでしょうね。羨ましいわ。
ありがとう! 古川さんにそう言ってもらえるとこころ強いよ!
私ってばホントに嫌味な女だ……。
それは良かったわ。
それでもまあ、難点といえば優香ちゃんと健太郎が付き合っているなかで、僕一人っていうのがちょっとね……。
それはたしかに気まずいわね。
気持ち悪い。気持ち悪い。
真摯な好意が気持ち悪い。
画面越しでも伝わってくる緊張と好意。
でもありがとう。こんな私を好いてくれて。
でもごめんなさい。貴方のその感情には向き合えないの。
私は貴方のその愛情に見合うだけの女ではないの。
私は私が嫌い。
どうせ私を好きだというのなら、
もっと軽い気持ちで、
私を不幸に落とすような……そんな好意を向けてほしい……。
あの……もし良かったら他の日でもいいから予定のない日……一緒に遊べないかな?
それは二人きりでってことかしら?
映画のチケットがちょうど二枚分あって……。
前に古川さんが『観てみたい』って言っていたラブロマンス系の映画なんだけど。
ごめんなさい。
私、実はそういった映画好きじゃないの。
どうしても冷めた目線で観てしまうの。
きっと純愛映画のエンドロールの後は破局が待っている気がしてならないから。
純愛を信用できないの。
だからハッピーエンドで終わる物語は好きじゃないんだ。
それってデートのお誘いかしら?
……はい。
もうバレバレだろうし、この際だからハッキリ言わせてもらいます。
古川さんの優しいところが好きです。
綺麗な所が好きです。
透き通るような声が好きです。
落ち着いた雰囲気が好きです。
笑顔が好きです。
なによりいつも前向きで、
何事も楽しそうに活発で、けれど上品で、
どんな小さな幸せも見つけられる貴女が大好きです。
それは偽物。
あなたはいま虚像に恋をしている。
哀れな人。でも愛おしい。その歪さが。
私だって恋をしたい。
でも、これは違う。
それだけは分かる。
私の求める恋はもっと……もっと……。
――なんだろう……?
ごめんなさい。
宮村君の気持ちはとても嬉しいわ。
それでも私はその気持ちに答える事ができないの。
そう……ですか。
せめて理由だけでも教えてもらってもいいですか?
そうね……。
分からないわ。
分からない……ですか?
ええ、恋が分からないの。
初恋がまだ……とかそういう意味でしょうか?
いいえ、分からないの。
どうしてもわからないの……