宮村優

夜分遅くに突然のLIMEでごめんね。
今週の日曜日僕の家で勉強会をすることが急に決まっちゃって……、
もし良かったら学年女子一位の古川さんにもぜひ来てもらいたいんだけど、どうかな?

メンバーは僕を含めた優香ちゃんと健太郎の三人を予定しているんだけど。

古川愛李

ごめんなさい。
その日はちょっと叔母さんにお手伝いを頼まれていて……。

宮村優

そうか……残念だけどそれなら仕方ないね。

古川愛李

本当にごめんなさい。
でも、学年男子一位の宮村君がいれば充分なんじゃないのかな?

宮村優

いやいや、
とはいっても男女総合じゃ古川さんの足元にも及ばないし……。

古川愛李

そんなに謙遜しなくてもいいのに。
宮村君は勉強だけじゃなくてスポーツも凄いし、きっと何でもそつなくこなせるのでしょうね。羨ましいわ。

宮村優

ありがとう! 古川さんにそう言ってもらえるとこころ強いよ! 

古川愛李

私ってばホントに嫌味な女だ……。

古川愛李

それは良かったわ。

宮村優

それでもまあ、難点といえば優香ちゃんと健太郎が付き合っているなかで、僕一人っていうのがちょっとね……。

古川愛李

それはたしかに気まずいわね。

古川愛李

気持ち悪い。気持ち悪い。

真摯な好意が気持ち悪い。

画面越しでも伝わってくる緊張と好意。

でもありがとう。こんな私を好いてくれて。

でもごめんなさい。貴方のその感情には向き合えないの。

私は貴方のその愛情に見合うだけの女ではないの。

私は私が嫌い。

どうせ私を好きだというのなら、

もっと軽い気持ちで、

私を不幸に落とすような……そんな好意を向けてほしい……。

宮村優

あの……もし良かったら他の日でもいいから予定のない日……一緒に遊べないかな?

古川愛李

それは二人きりでってことかしら?

宮村優

映画のチケットがちょうど二枚分あって……。
前に古川さんが『観てみたい』って言っていたラブロマンス系の映画なんだけど。

古川愛李

ごめんなさい。
私、実はそういった映画好きじゃないの。
どうしても冷めた目線で観てしまうの。
きっと純愛映画のエンドロールの後は破局が待っている気がしてならないから。
純愛を信用できないの。
だからハッピーエンドで終わる物語は好きじゃないんだ。

古川愛李

それってデートのお誘いかしら?

宮村優

……はい。
もうバレバレだろうし、この際だからハッキリ言わせてもらいます。

古川さんの優しいところが好きです。
綺麗な所が好きです。
透き通るような声が好きです。
落ち着いた雰囲気が好きです。
笑顔が好きです。

なによりいつも前向きで、
何事も楽しそうに活発で、けれど上品で、
どんな小さな幸せも見つけられる貴女が大好きです。

古川愛李

それは偽物。

あなたはいま虚像に恋をしている。

哀れな人。でも愛おしい。その歪さが。

私だって恋をしたい。

でも、これは違う。

それだけは分かる。

私の求める恋はもっと……もっと……。


――なんだろう……?

古川愛李

ごめんなさい。
宮村君の気持ちはとても嬉しいわ。
それでも私はその気持ちに答える事ができないの。

宮村優

そう……ですか。
せめて理由だけでも教えてもらってもいいですか?

古川愛李

そうね……。
分からないわ。

宮村優

分からない……ですか?

古川愛李

ええ、恋が分からないの。

宮村優

初恋がまだ……とかそういう意味でしょうか?

いいえ、分からないの。

どうしてもわからないの……

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