古川愛李

やっほー! 久しぶりの学校はどう?

永井蓮

どうもなにも今授業中だろ

古川愛李

いいの、いいの。
この先生教え方下手だから。

永井蓮

嫌味なヤツだな古川愛李

古川愛李

おっ! 名前覚えてくれたんだね。
どう? 私の美少女っぷりも今日で思い出したかい?

永井蓮

昨日の今日だからな、嫌でも目につく

美少女……かどうかは知らんけど顔はいい方なんじゃないないか

古川愛李

おや? 意外と素直に褒めてくれるんだね。

永井蓮

さして興味がないものを褒める事に関しては羞恥心も自尊心も減らないからな

古川愛李

素直すぎる表現は時に人を傷つけるという事を覚えておきなさい。

永井蓮

それはそうと俺を巻き込むなよ
携帯が見つかって没収されたらどうするんだ

古川愛李

あはは、非行少年が何を今さら。
それに携帯を没収されて困るようなお友達なんて私以外の他に誰かいるのかな?

永井蓮

単純に迷惑って話だよ

古川愛李

どーせ君はまともに勉強なんてしないんだから、いい暇つぶしになるでしょ。
あ、でも没収されて家族との連絡手段が取れなくなるのはマズイか。

永井蓮

いや……家族はどうでもいいよ

古川愛李

そう。

永井蓮

聞かないのか?

古川愛李

聞いてほしいのか?

永井蓮

……ばかじゃねえの

古川愛李

バカとは聞き捨てならないなー。
私、これでも優等生なのだけれど?
容姿端麗、頭脳明晰、そして美少女!

永井蓮

美少女は容姿端麗のうちに入るんじゃないのか……

古川愛李

細かいことを気にする男はモテないよ

永井蓮

雑誌の受け売りみたいな安い格言だな

でもまあ、なんつーか…………ありがと

古川愛李

なんのことだか分からないけれど、礼は受け取っておく主義だからね。どういたしまして。
そして私は、恩を求める主義でもある。
忘れないよーに!

永井蓮

お前が何を察したのかは知らないけど気を使ってくれていたことには感謝してるよ

でも正直なとこ話しても問題ないくらい普通の話だよ
重い話を期待していたんなら悪かったな

古川愛李

よく私が『重い話を期待していた』なんて分かったね。

永井蓮

曰く俺たちは似たもの同士なんだろ?
殆ど当てずっぽうの勘みたいなもんだったけど

古川愛李

やっぱり君は私にとっての特別だ

永井蓮

もしそれが口説いているつもりなら
それほどくさいセリフに返事はしたくないな

古川愛李

あはは、わかっているくせに。
私はね……君と私が似ているほど安心する。それに救われる。

永井蓮

普通そういうのって同族嫌悪するもんなんじゃないのか?

古川愛李

私達は普通じゃないからね。

同族嫌悪ってね、対面した際に自分の嫌いな部分が鏡のように映し出されるの。
だからみんな似た人を嫌う傾向にあるんだと思う。

でも私も……きっと君も、自分の嫌いなところも弱さも受け入れている。
むしろ愛しているといってもいい。
愛憎入り混じる形でね。

だからそんな普通じゃない感覚を持ってしまった私が、一人じゃなかった事実が今はとても心地よく感じるんだ。

永井蓮

……そか

古川愛李

ちょっと重かったかな?

永井蓮

ま……俺も似たような思いだよ

pagetop