ごついオッサンをイメージしていた面々は、想像とのギャップに少し胸を撫で下ろした。
ランディ=ウッズだ。
よろしくな。
おおー!
自分はハルっす。
ヨロシクっす。
なんか聞いてた話と
イメージ違うわね。
良い感じじゃん。
ミリーナがテキトーなこと
言ってただけだろ。
ごついオッサンをイメージしていた面々は、想像とのギャップに少し胸を撫で下ろした。
あー!
カ……
カジノで助けてくれた人ぉ~。
あの時は、
ありがとうございました。
ん!?
ああ、昨日の……
奇遇だな。
パーティリーダーのリュウだ。
よろしくなランディ。
つーか人数多くね?
うちは2パーティ構成なの。
私はユフィ。
もう一人のパーティリーダーよ。
なるほどな。
うちは編成や情報、
資金面にその他もろもろを
共有しているの。
その辺を了承して貰えるかしら?
問題ない。
つーか、逆。
逆?
こっちの条件だ。
大勢の前で尻込みする気配のないランディは、自分を受け入れる条件があるという。
俺はチンタラと
日銭を稼ぐ奴等に興味はない。
迷宮にリスクは当然だしよ、
恐れず深層に攻略するつもりだ。
当然だ。
俺達にはそれぞれ目的がある。
誰一人として
日銭稼ぎを目的としていないぞ。
もう一つ。
俺の目的はある組織について
調査すること。
組織?
『ペンデュラムエリー』って
奴等だ。
ランディの顔付きが険しくなったのが、誰の目にも分かるほどだった。
ペンデュラムエリー!?
あんなのただの
実在しない噂話じゃない!?
ランディあんたそんな……
ただの噂話って確定したら、
それはそれでいい。
で、迷宮攻略もいいが、
俺はその目的を優先する。
それが条件だ。
自分の目的を優先する――ランディの提示した条件はそれだけだったが、どこか危うさを感じさせる。返答を思案するリュウとユフィよりも先に、口を開いた者がいた。
間違いなく
返り討ちにあうでしょうね。
何だてめぇわ!
つーか誰だ!?
喧嘩売ってんなら
買ってやんぞ!!
外見からは想像し難いランディの気性の荒らさは、自身の持つ大きな目標をこけにされた気持ちからくるものだろうか。誰かれ構わず喧嘩を売っているわけではないのは、誰にも理解できた。
あなたの様なタイプには
口で言っても
伝わらないでしょう。
2時間後、修練場に来て下さい。
そこならあなたもその元気を
余す事なく発揮出来るはずです。
普段紳士的な態度のコフィンが、挑発的な言葉を残し酒場を出て行く。それを眺めて、アリスが笑いながら声を出した。
なんだいつになく熱いな。
新米のぼうずも熱いねぇ。
んーだよババァ。
るせぇっつーの。
なんだアイツ、
どこ行きやがった。
アリスへの暴言で場の空気が氷った。
何も知らないとは言えアリスへの言葉は、コフィンから受けた苛立ちの八つ当たりそのもの。
ゆっくり立ち上がりランディに近寄るアリス。
ユフィがもう手遅れだと身を引いている。アデルとシェルナはアワワと口を震わせ抱き合い、フィンクスは恐ろ面白いものが見れそうで高揚を隠せないでいる。
アリスだ。
アリスは無理矢理ランディの右手を取り握手する。
よ・ろ・し・く♪!!
『く』の所で、レンガも砕く握力を全開にしたようだ。
〇×◇$+△!!
超美形のランディからは、出そうもない声が酒場に響く。握手した右手が断末魔をあげている。強烈な痛感に襲われているランディの耳に、ウェイターがアリスの注文を復唱しているのが聞こえてきた。
「復唱致します。シルクシュプールを
ミディアムレアで0.9人前。
ホガーシェイド産の黒糖を1.78グラム入れた
シェルパティを程よく冷まして
クヴェウェマのカップで
同時にお持ち致します」
よく教育されている(アリスに)店員だ。深々した礼をシャキシャキしたウェイターは、厨房にスタスタと消えていった。
悠々とテーブルに付いているアリスに、馬鹿力で圧倒された感が増してくる。心身共に悶えるランディに、駆け寄ったのはシェルナとアデルだ。
応急処置しますね。
落ち着いて息を整えて、
手を出してください。
駄目だよランディ。
アリスに逆らったら
ここじゃ生きていけないよw
その言葉のリアリティは、実感したばかりのランディ。
アデルの言うように、落ち着きを取り戻してきたが、コフィンの事だけはどうしても気に入らなかった。それにひょっとするとペンデュラムの事を何か知っているかもしれないのだ。
無茶苦茶しやがって
ゴリラ女が……
だがあの黒髪野郎は許さねぇ。
ランディの気持ちは、コフィンが待つという修練場に向かっていた。