ほへぇ……。


 日差しは夏なのに、車窓の光景はずっと黄金色。

ねえ尤理(ゆうり)、あの畑、何?

 不思議さを抑えきれず、順(じゅん)は、ボックス席の向かいに座っている従姉の脛を軽く蹴った。

 『システム』に聞いても良かったが、物知りの従姉に聞く方が数秒早い。

麦。

えっ?


 返ってきた、一言だけの言葉に、ただ一度、頷く。

これが『麦』?

オンラインで学習したけど、見るのは、初めてだなぁ。

この植物が、あの美味しいものになるのか。


 口の中の唾を、順はぐっと飲み込んだ。

大麦。
麦茶用ね。


 その順の耳に、冷静な従姉の言葉が響く。

むぅ……。

でも。

麦茶だって、ちゃんと淹れれば十分美味しいんだから。


 裏切られたような想いをその思考で修正すると、順は再び、逆転した季節の車窓に目を細めた。

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