【2034年、モンガル『ホビロン』。飼葉タタミ】

 フォーチュンは四散した。

 粉のような形状を取ったフォーチュンにわたしは勝ちを信じた。

 けれど砕け散ったソレは、灰色の世界の終りに、

 ――言葉を吐いた。

歯車フォーチュン

わ、私ha死なない。大地と同化する。私が、私こそが『チキュウ』となるのだ。



 先生はもう動けない。息も弱く衰弱しきっている。それはわたし達も同じ。わたし達はチカラを使い果たしていた。

歯車フォーチュン

私はお前らの主人となり、その全てwoヒトチリ残さず、子子孫孫まで搾取してヤロウ♪



 のたまう『フォーチュン』も、敵キメラも、倒す手段は残っていなかった。『ホーム・ホルダー』の兵士が次々と両手を上げる。

 そこに聞こえたのは『ブラック・ダド』の宣誓だった。

ブラック・ダド

来い。王留(おうる)。


『ブラック・ダド』が構え振り放った金色の刃は、天から地に撃ちおろされた。天を割く雷(いかずち)は、先生のソレと比較にもならない。

『ブラック・ダド』の振り下ろした一撃で、フォーチュンは灰?と成った。圧倒的な光の渦はフォーチュンのキメラもわたし達のキメラも、全てを呑み込んでいく。

歯車フォーチュン

ば、万能細胞『マイティ』を? 万能再生機構『ノルン』を朽ちさせるのか? オマエはバカか? この化学の申し子を殺す事が、お前たち地球の民にどれだけの損失を与――


ブラック・ダド

黙れフォーチュン。


歯車フォーチュン

へげ?



『ブラック・ダド』が歩んだ一踏みは、『フォーチュン』の眼球を粉にした。
 あの『フォーチュン』が、あまりにもあっさりその身を失った。

ブラック・ダド

そして朽ちるのはお前だけではない。



『ブラック・ダド』はわたし達へその革靴の角度を向けた。

ブラック・ダド

緋色くん、キミもだ。そしてキミに触れた全ての生き物も、だ。



 陽の緋(あか)を背負った『ブラック・ダド』はわたし達へ、その歩みを近づけてくる。

ブラック・ダド

キミ達は滅ばなければならない。我が家族の為に全ての『ペスト』は死滅させる。



 背後からわたしの前に飛び出し、盾になろうとした男の子が居た。

コージ

『ブラック・ダド』! 僕と勝負しろ! 僕が負けたらおとなしく死んでやる! そして三種の神器もくれてやる!


 わたし達『化け物クリエイターズ』の1人、『スズキコージ』だった。楽々が『コージ』の暴挙に悲鳴を上げる。

楽々

コージ! あんた何を言って!



 最下級貧民『ジャンク』の『スズキコージ』が最強の剣士であり、世界の支配者である『ブラック・ダド』に勝負を挑んだ。

 事の動きについていけない。

コージ

その代わり、僕が勝ったら、僕達から手を引け! 2度と僕達に干渉するな! 緋色さんを殺すことも許さない!


ブラック・ダド

コージくん、だったか?


コージ

そうだ!



『ブラック・ダド』が『コージ』を前に怯む事は無かった。

ブラック・ダド

いったいナニで私と勝負をする気だい? どんな手段でも、私は負ける気がしないのだが?



 ただ彼を、『コージ』を信じてしまったのがわたし達『ジャンク』だ。楽々も、

楽々

やれやれ、だよ。

と、『ブラック・ダド』へでは無く『コージ』へ両手を上げる。

コージ

10分で勝負を付けてやる! 勝負方法は、


『コージ』は『ブラック・ダド』を指差した。

コージ

貴方が考えたというゲーム、『ネーム・ポーカー』!


 リーダーが教えてくれた事実を『コージ』は口にした。
 その提言に『ブラック・ダド』が口を閉ざす。

コージ

ただ、僕に時間は5分も要らないけどね! この勝負受けるかい? 世界の支配者『ブラック・ダド』。


いや、最強の手札『ジョーカー』!



『ブラック・ダド』は『コージ』をただただ見つめていた。やがて、無言で顎を振り下ろす。

 わたし達『ジャンク』最後の勝負はヒトの娯楽『ポーカー』に決まった。わたし達はその全てを『コージ』の示す札に委ねたんだ。

【第24話】コージの挑戦。

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