第二十三幕
『彼女は彼に、第二の人生を謳歌させない』
第二十三幕
『彼女は彼に、第二の人生を謳歌させない』
確かこの辺りのはず……
プリスちゃんとは一度別れ、私はこの『ダイハーツ村』に来ていた。
彼女曰く、ここに例の子がいるらしい。
何やら色々やらかしているとのことだが……
え、なに?
村人達の笑い声がする方へ、駆け足で向かった。
人だかりが……
一体何なの?
えーでは続いて!
ショートコント『きゅうり』!
きゅきゅきゅきゅきゅききゅきゅきゅゅきゅきゅうりぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
……千利休!
せ、千利休って……
寒!!!!!
えへへ!
どうもどうも!
彼女が言ってたのはこのことか。
確かに第二の人生を謳歌している様子だが、正直ギャグが寒すぎてすぐに指摘したかった。
私は居ても立ってもいられず、彼に声をかけた。
あ、あの!
みなさん!
本日は以上です、ありがとうございました!
……
さーって
今日は豚でも食べに行こうかなー
いや、やっぱりここは牛かな!
イベリコ牛!
いや、それは豚だろカス
すいません!
ほえぇ!?
あ、ごめんなさい!
やっぱり牛タンの方がいいですよね!?
分かってますよはい!
え、違いますけど……
あ、失礼致しました
てか
すっげぇ可愛いねキミ
じょ、冗談はやめてください!
いやいや割と本気で思ってるよ
もしかして『赤髪美人』って通り名だったりする?
ありません!
なーんだ勿体ない
で、俺に何かありました?
あ、はい……
えーっと、コントを見させていただきまして……
お!
新規の方でしたか!
ありがとうございます!!!!!
俺のコントどうでしたか?
正直、千利休はないです
WHAT'S!?
神谷ユウキくん、ほんとこの人は高校生になっても変わっていなかった。
昔から訳の分からない言動、行動、考え。
でも不思議と引き寄せられる。もっと話したい、もっと仲良くなりたい、そう思える人柄だ。
そんな彼だからこそ、異世界に来ても理性を保てているし、単純に楽しむ(謳歌する)ことができるのだろうか。
グズ……
ん?
泣いてる?
あ、いえ!
ちょっと風邪気味でして……
危ない、危ない。ちょっと泣きそうになってしまった。
でも本当に生きててくれて良かった。
私、『マチ』といいます
あなたも地球の方ですよね?
俺は『ノト』です
へーマチさんも地球から?
私は自分の素性を偽ることにした。
理由はユウキくんがおそらく神様の力で『竹内マチ』の記憶を失っているから都合がよかったのと、
どうしてもこれ以上、彼に迷惑をかけたくなかった。
私が元々この惑星マルクの人間で、目的が貴方の救出とこの世界の調査だと知られたら、きっと「手伝う」って言い出すに決まってるから。
だから私は、キミに正体を隠して行動する……
誰かに見られている可能性だって、あるんだ。
実は、貴方のような地球から転生してきた人を探していたんです
なるほど、運命かな?
う、うんめー?
俺のような『イケメン彼氏』を探していたと?
いや、全然違いますけど
あ、そう
フーン
同じ世界から来たノトさんにしか頼めない事があります!
?
何だい?
一瞬、自分の中に迷いが生じる。
ユウキくんはこの世界を、第二の人生を謳歌している。
このままの方が彼にとっても幸せなのではないだろうか?
いや、馬鹿か私は。
彼を待っている人が居ることを忘れるな。
神谷コウキくん、そしてそのお母さん、お父さん。
そもそも死んでしまった後の幸せなんて、絶対にないし、あっては駄目なんだ。
私は、キミの第二の人生を……謳歌させない!
絶対に連れ帰る。
私、地球に帰りたいんです!
第二十三幕 終