『ひっくりかえってた二人』

…だよね!?

え、ごめん今何か言った?

空に風船飛んでいったの見てたの。誰が飛ばしたんだろうって。

そっか。

でも、わかるなソレ!
なんか魅入っちゃうよな。

きっと私たちの他にも見上げてる人いると思うよ

だよな。
あのまま入道雲に飲み込まれたらどうなるんだろう…とかさ

鳥に突かれて割れたら哀しいなあとか

あ、俺それ考えたことないや

やったー。じゃあ私の勝ち!アイスおごれ~

なんだよそれ。今の何勝負だったわけ?

ああ、溶けてしまう!

ちょっとそれは気が早くない?

違う違う!赤い風船が雲に溶けていくの!

ホントだ。

ちょっと悲しいよな

切ないよね

あーあ

あーあ

そういえばさっき何て言おうとしたの?

ん、ああ

君って猫だよね?

さっきから君がゴロゴロ喉ならしてうるさいんだよ。

雷の間違いでしょう?

いやいや、もう耳出てるし。何なら目の色も風船みたいに変わってるから。

バレちゃあしょうがない。

喰っちまうぞ!

え、ちょま!!

と、鳥ぃいいいいいいいい!?!?!?

ごめん、やっぱり君にチキンが香ってしまった以上ここにはいられない。

てめえ!
どこに行く気だよ!
逃げんじゃねえ!

逃げるんじゃない。
追いかけるのさ、あの赤い風船の行き先をね。

君も気になってたろ?
僕もそうさ。

バハハーイ

あーあ、また野生で一人になっちゃった。

こんなはずじゃなかったんだけどな。

アイス食べに行くか。

どこか遠い空の向こうで
赤い風船が弾ける音がした。

おしまい

ひっくり返ってた二人

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