Wild Worldシリーズ
Wild Worldシリーズ
セアト暦40年
英雄の輝石
25.異紡ぎの森
鬱蒼と多い茂る緑。
それは、全方位に渡っていた。
濃厚な緑がどこまでも広がり、時折木漏れ日もこぼれるが、一人でいたらまず間違いなく迷ってしまっていただろう。
異紡ぎの森。
砂の街へのルートを砂漠にして正解だったと思った。
黙って歩いているうちに、思考は過去と現在を行き来する。
自分の前を行くレダとダイオスを追いながら、ラムダは今から会いに行く“魔女”のことを思案していた。
リバーストーンに伝わってきた話の中にも、“魔女の話”というのはいくつかあった。
ある話では、村の人々を脅かす魔女。
またある話では、人々の病気を癒してくれる無愛想な魔女。
またある話では、魔女だということを隠して普通の人々と紛れて生活をする魔女。
共通しているのは、“魔法”が使えるということ。
それは、人知を超えた力で、とてもとても言い表せないほどすごいもの。
そして、黒いローブを纏い、三角帽子を被り、長い杖をついている。
それから、人里離れた暗い場所で、何かまがまがしいものを作っていた。
そんな姿を想像して、ラムダは何となく、現実感が沸かなかった。
今から会いに行くのは、そんな人物なのだろうか。
どれくらい歩いただろうか。
道なき道を、湿った草木を踏みしめ、地上にまで突き出た太い根を越えながら、ラムダはとうとう限界が近づいてきた。
風の通り道がないことと、湿度が高いせいで、蒸し暑い。
ダイオスはさっさと進んでしまうが、レダは時々振り返り、ラムダの様子を心配した。
森の中って、こんなに暑いの?
場所によるかな
この辺りは、見えないけど太陽が近いんだよ
だから熱気がこもるんだ
もっとひんやりして、かなり寒いところもあるみたいだよ
レダの言葉を受けて、ラムダは上を見上げた。
緑が一面にあるだけで、それ以外の色はないに等しい。
ほら、もうすぐだよ
レダに励まされて、何とか進む。
代わり映えしない景色に、狂ってきてしまいそうだ。
行く手を塞いだ太い木を越える。
すると、その先に小さな小屋が見えた。
木々の間にとても器用に建っている。複雑な造りで、難解な図解のように説明しにくい小屋。
ダイオスが扉らしきところに立っていた。
彼が何か言うと、扉が開き、誰かが出てきた。
魔女だ……
ラムダは思わず呟いた。