Wild Worldシリーズ
Wild Worldシリーズ
セアト暦40年
英雄の輝石
24.それぞれに選ぶ道
一体いつからこの場所に存在していたのだろう。
広い広い緑の大地に、ひとつだけ空に届きそうなほど育った大樹の樹皮に手を沿え、ケルトは透き通るような青空を見上げた。
遠くには城が聳え立っている。
そこは、もう戻れない場所だった。
けれど、後悔していない自分がいる。
レダに助けられ、フラウに助けられ、自由になった。
そして、帰る場所を失った。
大空の下放り出され、どこへ行ってもいいと、そう言われたが、やろうと思うことはひとつだけだった。
星の研究は封じられたが、それは口約束だけなので、堂々と破るつもりである。
この先にあるミカエルの丘に行けば、そうそう見つかることもないだろう。
不安は、正直少しだけある。
寂しさはかなりなる。
だけど、あまりわがままなんて言えないことは分かっていた。
今、自分ひとりの力で立っているわけではない。
レダがいて、ラムダがいて、フラウがいて……
彼らの力があってこそ、自分がここにいることを実感していた。
そして、城下町にいるアーチェのことを考える。
幼い頃に両親を亡くし、ずっとふたりきりの兄妹だった。
アーチェはあれでしっかりしているから、そんなに心配はしていない。
落ち着いたら、手紙でも出そうか
そんな風に思考に耽っていたら、南からふたつの影が駆けてきた。
だんだんと近づいてきて、それが誰だかわかると、にっこりと笑う。
それは、ラムダとフラウだった。
ケルト!
無事だったか!
息を切らしたラムダが、自分を見るなり安心したように笑うから、ケルトはなんだか嬉しくなった。
大丈夫だよ
何もされてない
しかし、隣にいるフラウの姿に、小さく首をかしげる。
フラウも無事だったんだね
えぇ。おかげさまで
……何でいるの?
ついていこうと思って
え?
ケルトに
……えぇっ!?
ケルトが大げさに驚くと、ラムダが必死に笑いを堪えていた。
そんなラムダを叩きながら、フラウは説明した。
あたしも城下町にもういられないって知ってるわよね
レダにも会えたし、もう旅をする理由がないから
そう……
でも、僕を選ばなくても……
あなたを選んだわけじゃないわよ!
勘違いしないでほしいわ!
フラウが赤くなって怒鳴りだすと、ラムダは堪えきれなくなって腹を抱えて笑い出した。
行くとこないからちょっと預かってほしいんだよ
アーチェにも了解済み
あぁ。そういうことか
ラムダは簡単に説明すると、アーチェから持たされたものをケルトに渡した。
ありがとう
荷物を簡単に確認しながら、ケルトは聞いた。
アーチェ、何か言ってた?
お兄ちゃんに会いにいけるって喜んでたよ。そのうち行くって
そっか……
ケルトは、兄の顔で微笑んだ。
俺もそのうち遊びに行くよ
ラムダはどうするの?
しばらくは、レダとダイオスさんと一緒に行く
その後は分からないけど
ラムダは、南の空を眺めた。
太陽はまだこれから昇ろうとしていた。