放課後、聖月はふらふらと体育館の前まで
来ていた。
今朝、いつもの如く別れ際に ――
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『帰り、待てるんなら部活終わるの待っててくれる？』
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ツナにそう言われたのだ。
戸口の所で男子バスケ部の練習を見ていた。
たくさんいる１年生部員の中で黙々とサーキット
トレーニングを続けるツナ。
放課後、聖月はふらふらと体育館の前まで
来ていた。
今朝、いつもの如く別れ際に ――
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『帰り、待てるんなら部活終わるの待っててくれる？』
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ツナにそう言われたのだ。
戸口の所で男子バスケ部の練習を見ていた。
たくさんいる１年生部員の中で黙々とサーキット
トレーニングを続けるツナ。
（どの誰よりもかっこいい……）
聖月に気づいたツナがニッと笑いかけると
聖月も口元をほんの少し緩ませた。
もしかしてツナ待ってんの？
そんな問いかけに聖月が振り返ると、
そこに立っていたのは朝子だった。
朝子ちゃん……
話があるんだけど。ちょっと来て
初めて見る彼女の真剣な眼差し ――
うん
聖月は朝子に言われる事が何なのか？
何となくわかっていた。
朝子の背中に夕日が当たって眩しい。
水飲み場の前までくると、
ピタッと立ち止まって朝子が振り返った。
聖月、ツナの事どう思ってんの？ 好きなの？
（好きだよ）
そう言えたらどれだけ気が楽か……
どうなの？ そこんとこはっきりさせたいんだけど？
聖月は下を向く。
今まで自分の病気のせいで、
朝子にもいっぱい我慢を強いてきた。
生まれた時から一緒に育ってきた朝子は従姉妹
なんかじゃなくて、本当の妹だ。
（聖月の方が朝子より２ヶ月早く生まれたので）
たくさんのモノをそうとは気付かず奪ってきた。
お母さんの愛情 ―― ふれあいの時間……
母さんにかまわれながらも、
その後ろで朝子が口を真一文字にしてさびしそうに
している姿を何度も聖月は目にしていた。
だから聖月はいつも朝子には頭が上がらない。
……好き、じゃないよ
ほんとに？
うん。だってツナは朝子の彼氏でしょ？ いくら何でも妹の彼氏好きになるわけない。待ってたのは自転車で連れて帰ってくれるっていうから。それだけ。本当にそれだけだよ
フッと朝子の表情が明るくなった。
よかった。聖月がもしツナ好きになっちゃったらどうしようかと思った。長いこと一緒だったから好みもやっぱ似てるのかなーってさ？
朝子はふぅーっと胸を撫でおろす。
だ、だいたい、手嶌くんって私のタイプじゃないし
１度嘘をついてしまうと言わなくてもいいような
思ってもない言葉が流暢にスラスラ出てきた。
そっかぁ。私さぁ、聖月がツナに普通に触れられるの
見て驚いちゃって。他人で触って大丈夫な人って今までいなかったじゃん？ だからてっきりもしかしたらって変に勘ぐっちゃったよ
もーうっ。朝子ちゃんの早とちり
ガサッという物音にハッと２人は振り返った。
（う……そ）
そこに立っていたのはジャージ姿の無表情な
ツナだった。
聖月は思わず背中を向ける。
終わったのー？
あ、あぁ。だから２人を呼びにきた
聖月はツナの方を振り向けなかった。
（一体どの辺りから聞かれていたんだろう）
ツナは水道の水で顔を洗い、
タオルで拭くと聖月に言った。
お待たせ。"タイプ"じゃない俺でもよかったら家まで送らせてよ
……
絶対最初から聞かれてる。
ツナに掴まって帰りの道を自転車で急いだ。
聖月はチラッとツナを見るが、
ツナは登校時ほどしゃべらず、
ただ上り坂にペダルを漕いでいる。
きっと気を悪くしたに違いない。
だって……好きじゃなくても
あんな風に言われたら誰だっていい気はしない
だろう。
聖月はシュンと下を向いた。
よし、到達
え……？
朝子の自転車、
そして聖月とツナを乗せたママチャリが
シャーっと下り坂を加速して下っていく。
ひゃっほー
気ん持ちいー
朝子とツナははしゃいでいる。
（は……早いっ）
て……手嶌くんっ
聖月はぎゅっとツナの体にしがみついた。
そんな聖月の手にツナは片手を重ねた。
なんだよ、怖いのか？ 手ぇ離すなよ？
大丈夫と言う風に添えられた温かい手に
かぁぁぁぁと聖月は赤くなる。
う、うん……
冷たい風がツナの汗の入り混じる匂いを運んで
聖月の頬を撫でた。
（ホントは好き……。ツナくんの事が好きだよ）
聖月はツナの背中にぎゅっと顔を押し付けた。
