Wild WOrldシリーズ
Wild WOrldシリーズ
セアト暦40年
英雄の輝石
23.代償に失うもの
永久追放。
結局、ケルトには罰を与えられた。
城および城下町へはもう二度と行くことは出来ない。
そして、星の研究も封印された。
兵士2人に付き添われ、城の裏口から、城外の、街の外の一切開拓されていない荒野へと何も持たないまま放たれた。
ポツンとひとり立ち尽くしたまま、開放感と寂しさで、しばらく動けないでいた。
牢から出されると、フラウはエントランスへ連れて行かれた。
暗闇から光のある場所へ出ると、眩しさでよろめきそうになる。
実際は10時間くらいしか牢にいなかったはずなのだ
が、何年も牢の中にいたような、そんな感覚がしていた。
自分よりも浮き足立っている、隣を歩いている兵士にフラウは苦笑した。
そして、レダの姿を見つけるなり飛びつきたくなった衝動を、ぐっと堪えた。
生きていた
よかった。
会えた。
無事だった。
それを確かめただけで、フラウは満足だった。
久しぶり
よかったな
ラムダは、フラウを見つけると安心したようにフラウの肩を叩いた。
お互い少しやつれていることに気付いたが、声には出さなかった。
あたし……
解放されたんだよ
だけど、フラウはもう二度とここには来れないって
ほんの少しだけ寂しさの混ざる声でラムダが説明する。
ここはフラウの家のはずなのに
来ることが許されないというのはひどいとラムダは思った。
勘当とは違う。
追い出されたというのも、違う。
王族の事情というのはこういうものか。
ラムダはやりきれない気持ちを抱えていた。
セアト王は、最後になるのにも関わらずフラウに会いに来なかった。
これが、全てなのかもしれない。
その人のことを想っていても、上手く立ち回ることは難しい。
一国を担うものは、個人的な感情を優先することは許されない。
ラムダが苦い顔をしていると、レダがラムダの頭にポンと手を置いた。
そしてやさしい笑顔でフラウに向き合う。
久しぶりだね
あれから、どうしていたのかちょっと心配だったけど、ラムダに少し聞いたよ
元気だったみたいでよかった
ええ。あなたのお陰よ
ありがとう
フラウも、レダの元気な姿を見て安心した。
もともと、彼に会うため、そしてこのたった一言を言うために旅をしていた。
だからもう、旅をする理由がなくなった。
そして、帰る場所がなくなった。
フラウの憂いに、この場にいる誰もが気付かなかった。
アスターは、王のお付の少年と共に、遠目から再会した彼らを眺めていた。
半分は監視。
もう半分は、アスターにしては珍しいことに、好奇心。
腕を組んで立っている少年の隣に、あまり目立たないように立っている。
あいつら、早く行けばいいんだ
城の平和をかき乱しやがって
ぼやいたのは少年。
不機嫌を隠そうともせず、表情をあらわにする。
感情の起伏が激しい少年ではあるが、何を考えているのか分からないような人よりはいい。
アスターはそう思う。
城の平和って何?
思わず尋ねた。
そんなもの、存在しないように思っていたから。
いつだって誰かの思惑が見えないところで精密に働いていた。
ここにいる大人達は、笑顔でいても、腹の中では何を考えているのか分からないことが多い。
そういうものに、少し疲れていた。
正直、レダにはそれに近いものを感じていた。
腹の中では何を考えているのか分からない。
実際はやさしいだけなのだが、やさしさを信じられないでいた。
ただ、、ラムダは違った。
真っ直ぐな人だから、信じられた。
この少年もそうだ。
王のためだけに働いているから、分かりやすい。
元々アスターとこの少年は、歳が近いこともあってか、セアト王のいないところでは気安く話していた。
セアト王のお心が穏やかなことだよ
ためらわずに答えた少年に、あぁなるほどと、アスターは妙に納得してしまった。