――冒険者の酒場。

ユフィ

と、いうわけよ。
理解頂けたかしら。

 ユフィが話終えると、ある男に視線が釘付け――いや、ある男が視線で串刺しにされた。

ハル

い、いや~、
なんて言うんすか、
その、あの、あれっすよ、
人助けっすよ。

シャイン

借金してきた奴の
言い訳なんて
聞くわけないでしょ。
殺すっ!!

 シャインがハルに鉄拳制裁をくらわした。更に、タラトに指示を飛ばして、挟み撃ちでボコボコにしている。

リュウ

ハルのエラーは計算済み
だけどなぁ~

ジュピター

さり気なく、ひどっ!

 そう言いながら、ボコボコにされてるハルを横目でスルーするジュピター。

シェルナ

もう一回、もう一回
おさらいで話して。
何か良い方法が
浮かぶかもしれないよ。

 シェルナの言葉に、不機嫌そうなユフィが反応した。

 以下、話の内容を要約して記載する。



 ――朝、ハルが酒場に向かう頃、中央通り。寝ぼけ眼のままシャツを裏表前後ろ逆にきたままのハルは、鍛錬の内と言って、手に靴を履き逆立ちして往来を進んでいた。そうしたら、目の前に、小さな男の子が流れの早い水路の脇をフラフラと歩いていた。

 危ないっす! と、思ったハルは、逆立ちのまま男の子に近付き助けようとした。傍にいた男の父親は、シャツの着こなしが怪しく逆立ちで靴を履いた男が息子に接近していることに気付く。無論この後ハルは取り押さえられてしまった。弁解すればするほど混沌とする言い分。完全に変質者と間違われてしまい、父親にすがりついたところ、この世に10個しか生産されていないブローチを引き千切ってしまい、水路に落として弁償しなければならなくなった。その後、偶然通りかかったユフィが保護(保護者なのかw)した。そういう話だ。

シェルナ

やっぱ無理。
面白い♪

ダナン

それで五万ガロンか……
キツイな。

シャセツ

迷宮で何日か探索すれば
何とかなるだろ。

ユフィ

期限は今日の夕方よ。

フィンクス

チキンカクテルレースで
賭けるとかどうだ?

ユフィ

あのくだらなくて
底抜けの馬鹿が
やりそうなお遊びの事かしら?

ジュピター

あれは賭け事禁制だし、
仮に賭けれても
ハルは強いけど
金が絡むと
異常に弱くなるからな。

ロココ

一体どうすれば
そんな大金…………

アデル

先輩冒険者に
お借りするというのは
どうでしょうか?

ユフィ

もう聞いたわ。
御馴染みの面々は
持ち合わせがないって。

ダナン

あれしかないか……

 ダナンの言うあれとは? 勿体付けるダナンの言葉を誰も理解できない。額を左手で押さえたダナンが、「苦肉の策」と漏らしながら右手の人差し指をピンと前方に向けた。


 ボコボコにされて机に突っ伏しているハル以外が、その指先の延長線上に注目する。

アリス

なんだ?
ボウズ共?
しけた面並べて?

 そこにはギャンブラーアリス。

 ダナンが言うあれとは、おそらくカジノでのギャンブル。それを真っ先に推測してユフィが声を荒げる。

ユフィ

駄目よ!
絶対に駄目!
ドツボ!!
破滅確定!!
人生の底なし沼よ!!

アリス

正しい。実に正しい。
だが、
だからこそ面白いんだ♪

 一瞬で全てを悟ったアリスは、力強く親指を立て瞳をギラつかせた。

 ~兆章~     85、人生の底なし沼

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