二ノ宮 舞花

……なにからすればいいんだろう

帰り道、由宇と並んでゆっくりと歩みを進める。

静かな秋の暮れ、すこし冷たい風が頬を撫でる。ほんのひと時の夕の時間、恐ろしいほど赤い日が、道の向こうへ沈んでいく。

羽邑 由宇

考えるのを、やめてしまいたくなりそうで怖いよ

羽邑 由宇

……なんてね、とりあえず、花楓さんに会いに行こうよ、そうしないとなにも始まらない

二ノ宮 舞花

やっぱり、そうだよね……

確かめるのが恐ろしかった。

今更? という気もする。わかっている。

だって、知ろうとしたのは自分なのだから。

二ノ宮 舞花

……由宇は、すごいね

羽邑 由宇

え、なにが?

二ノ宮 舞花

由宇はずっとひとりでいろいろなもの抱えてきたのに、それでもまだ、知ることをやめようとしないから

羽邑 由宇

…………

羽邑 由宇

僕はだって、今出来ることをし尽さないと、これからどうなってしまうか、わからないから

羽邑 由宇

怖くても、怖いままでも、それでもやっぱり、出来ることをしながら生きるしか、ないから

二ノ宮 舞花

……!!

二ノ宮 舞花

……私だって、それは同じだね

羽邑 由宇

え?

二ノ宮 舞花

私だって、一秒後には、どうなってるかわからないよね

二ノ宮 舞花

今出来ることをし尽す、その通りだね

二ノ宮 舞花

やっぱり、由宇はすごい

羽邑 由宇

そんなに褒められても、なにも出ないよ……?

話し合って、明日の放課後におばあちゃんに会いに行くことにした。

秋帆に電話したら、

神原 秋帆

わたしに出来ることは全部やったつもり、だからもう、お役御免でしょ

神原 秋帆

ふたりで、行ってらっしゃいな

そして、頑張って、と言葉を残して電話を切った。

秋帆の協力がなかったら、私はきっと、過去のことを知ろうという発想すら抱かなかった。

……ほんとうに、助けられてばかりだ。

羽邑 由宇

それじゃあ、また明日、学校で

二ノ宮 舞花

うん、また明日

後ろめたいと思うなら、情けないと思うなら、自分が動かなければいけない。

怖がっているだけではいけない。

もう何度目かの決意を固めて、私はこれで最後になるようにと、その決意を強く強く握りしめた。

時屋 吉野

お電話ありがとうございます、時間屋でございます

時屋 吉野

……お久しぶりでございます

時屋 吉野

おや、先見の明でもお持ちで? ご心配は無用です

時屋 吉野

契約には守秘義務がつきもの。私がそれを違えることがあれば、その時は時間屋の看板を下ろす時でしょう

時屋 吉野

……そのような場面は、決して訪れないでしょうけれどね

第二十七話へ、続く。

26.知る恐怖、向き合う決意

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