雨の匂いがする
やっと、来てくれたね
……僕が来たんじゃない、君が来たんだろ
そうだったね
あ
こんなに天気が良いのは、晴がいるから?
私は晴れ女の晴だもん
残念だね
雨が降るよ
降らないよ
僕は雨男の雨だ
そうだね
僕がいる限り必ず雨が降る
ほらね
私の晴れ女パワーの方が強いんだよ
おりゃぁぁぁ
ほらね
……なんで
私は雨に青空を見せたいの
え?
キレイでしょ?
……うん
でも無駄だよ
僕がいるだけで雨が降る
僕は雨男の雨だから
それじゃあ
晴れ女の晴が隣にいると、どうなるのかな?
え?
虹だ
お天気雨っていうんだよね
晴が雨の側にいると、キレイな虹が見れるんだ
晴、濡れちゃうよ
へーきだよぉ
この雨はすぐに止むから
ほらね
どうして
雨……君のことを好きになっても良い?
ねぇ
君のことを好きになれば、あの虹を何度も見れるかな?
僕は価値のない人間だよ
僕の存在が雨を呼ぶ
私が雨に価値を与えてあげる
君は私に虹を見せてくれる人
君のことを好きになっても良いかな?
それって、許可を得ないとダメなの?
一方的な片想いも良いけど、度が過ぎたらストーカーだよ、変態にはなりたくない
私だけが好きなのはダメ
君にも私を好きになって貰わないといけないから
ええ?
どうかな?
僕を好きになってくれるの?
うん! 好きになりたいの!
晴れ女もね、苦労するんだよ
晴れて欲しくないのに晴れたら、晴の所為になるから
君も……?
雨が降ると雨の所為って、みんなが言うんだ
君も
辛かったんだね
だから、僕はみんなと一緒にいないようにした
偶然なのに、私の所為にするみんなから距離を置いたの
僕はずっとひとりぼっち、これからも
ひとりじゃないよ、晴がいるから
あ
雨のこと、好きになっちゃったみたい
え?
好きだよ
雨はどう?
どう?って
晴のこと好き?
………僕は
ずっと前から晴が好きだった
愛しかった
えええ?
晴れ渡る空に何度憧れたことか……雨男には届かない
僕はこの灰色の空しか見えなかった
今は青空が見えてる
晴のお蔭で
これって両想いだよね?
そ、そういうことになるね
これからは、晴れ渡る空も、冷たい雨も、キレイな虹も一緒に見ようね
………うん
あと、夕焼け色の空も
あら、もうこんな時間
夕焼けって良いよね
恥ずかしくて顔が真っ赤になっていても誤魔化せる
雨の顔、すごい赤いよ
晴だって真っ赤だよ
…………
…………
帰ろうか?
うん
明日は晴れかな雨かな
僕がいるから雨だよ
私がいるから晴れだよ
あ……天気予報は曇りだって
天気予報は外れるかも
予報は予報だからね
でも私たちは天気を支配できる
「晴れ女」ってみんなに呼ばれて最初は楽しかった。調子に乗っていたことは認めるよ。晴れたのは私のお蔭だって、みんなが言ってくれたの
でも、次第に晴れたのは私の所為だって言われるようになって……
晴れて欲しいときに晴れたら日頃の行いが良いから、晴れてほしくないときに晴れると私の所為って言われて
気が付くと、私は血のように真っ赤な空の下にいたの
そして、屋上で君と出会った
僕は、屋上から飛び降りるところだった
僕の所為で雨が降った……先生まで言うんだ。だから僕がいなくなれば良いと思った
私は先客に声をかけてみた
無視して飛び降りようとしたのに、君は僕にしがみついた
私と付き合ってってお願いした
何だコイツって思ったけど
死ぬ前に恋がしたかったんだ
話を聞くうちに、君のことが自分のことのように思えて来たんだ
似たような境遇だったから意気投合した
あのときは……天気雨になったね……
そして
私たちは手を繋いで、一緒に飛び降りたんだよ
二人だから怖くなかった
君は死の直前に出会えた運命の人
もっと早く出会いたかったっていうのは、傲慢
この瞬間に出会えたのは、必然
あの瞬間だからこそ出会えた。一瞬の恋は激しく燃え上がった
そして、私は晴れの精霊に
僕は雨の精霊になったんだ
私たちはそれぞれの場所で目覚めた
新しい僕が始まった
私は君を探したんだよ
君の恋の炎は消えることはなかったんだね
消えてしまった君の炎をもう一度、燃やしに来たんだよ
そして、出会った
雨の精霊と晴れの精霊は出会っちゃいけないのに……
私たちの絆は強かったんだよ
激しく燃えあがった両想いの炎
もう、消さないでね
うん、消さないよ
でも、雨の精霊の仕事、リストラされちゃったよ。無職だよ……
私も晴れの精霊、リストラだってさ
これから、どうする? いじめっ子に仕返しにしにいく
そんな無駄な時間は不要だよ
そうだ! フフフ、これは名案
……っっ
これからは、二人で虹の精霊を名乗ろう
ずっと、一緒にね
勝手に名乗って良いものなの?
私がルールだから
まずは、ヨーロッパ行こうか
何で?
日本でいう虹って七色だけど、ヨーロッパだと五色らしいよ。虹の精を名乗るなら各国の虹を見ないと
新婚旅行は世界一周虹の旅? いいじゃない!
あ……そうだね
手、離さないでね
……ん……わかってる
レッツゴー!!
……と、その前にエネルギー補給を
!