あー暑い

『気温が高いので外出は控えましょう』? 仕事は休めないでしょ

エロイムエッサッサー エロイムエッサッサー

夏よ、滅べ

今日もおつかれさま

夏を滅ぼさないで、夏コミがなくなるから

夏コミという聖戦のために戦う戦士たちがいるんだ

あれ、今の声に出てた?

うん。仕事、大変?

うちの工場さ、午前に休憩がないから水分補給も許されないんだよ

うちもだよ。作業の手を止めるなってね

喉カラカラで喋るのメンドーってなる

わかるわかるよ

とにかく暑い、疲れた……って1日に何回も言ってる

電車は良いよね、冷房効いてるから

外に出るの嫌になるよね

扉が開いた瞬間のモヤッとした空気がしんどいよね

ずっと、このままでいたい

とても心地が良いもの

ダメだよ、君は降りないと

どうして、ここにいるの?

え?

だって、昨日、おばさんから電話が来て貴方が……………

……………

…………

君に会いたかった

一昨日、着信あったのに出られなかった。私、気付かなくて

疲れてたんだよね。そんな気がした

会社でミスしちゃって……何もかもが嫌になって

僕もそうだった。疲れて暑くて、色々なことがあって苦しかった

暑いと、ネガティブになるよね。自分は熱中症で死ぬのかなって……たまに思う

その方が楽かなって。苦しい思いするために働くぐらいなら……って思って、それじゃダメだと思っても、また不安になって

………

仕事休んで電車に乗って考え事をしていた

いけないことだけど、降りないでずっと同じ路線を行ったり来たり。思考も行ったり来たり

定期券あるからって、いけないことだよ、駅員さんに謝れ

うん、ごめんなさい

私に謝られても困る

無賃乗車分、立て替えて払っておいて

断る!それくらい自分で払え!

適当な駅で降りて、当てもなくフラフラ歩いているうちに夕方になっていて

君に電話して、もしも君が出てくれたなら……って賭けだった

サイテーな賭けだよ

うん、ごめんね

謝るなら、そんなことしないで

死なないで欲しかった

ごめん

ばか

………

私がバカだった

貴方の着信は気付いてた、電車の中だし、疲れてたしって出なかった。メールくらいすれば良かったのに、帰ったら忘れて寝ちゃって、本当にバカだった

自分を責めないで

電車は次の駅を目指して進む。このままじゃ苦しい明日が待ってる。私は貴方の実家に行って何も話せない貴方と再会するんだよ、

………

でも、ね

電車を乗り換えて、あっちに乗り込めば。元の駅に戻れるんだよ

貴方は私と話す奇跡を起こした、私はあっちの電車に乗り換える奇跡を起こすよ

戻るんだ、分岐点に

開くドアにお気を付けください

さようなら

『貴方からの着信画面を見た私』に戻るよ

だから、待っていてね

え……

って、夢をみたんだよ

うわあ、ホラーだね

僕、死んでるじゃん

暑さで夢と現実の区別がつかない

熱中症、気をつけてよ

水分補給、あまりできないけど、がんばる

今日は誘ってくれて、ありがと

あんな夢を見たあとに

貴方から着信あって

出たら何も話さないんだもん……ゾッとしたよ

かけてきたのは、そっちなのに

ご、ごめん

こっちは電車の中だったんだよ、まわりにジロジロ見られたから

勢いで、そっち帰るから会おうって言っちゃった。帰省の予定なかったのに

あははは……

それで、あのときは何の話だったの?

何を話したいのか忘れちゃったんだ、暑さにやられて君に電話するなんてね

1年ぶりに連絡来て、何かと思ったら無言なんだもの。心配になったよ

夢の貴方みたいに、バカなことするんじゃって

夏の暑さって怖いね

…………

君が出てくれなかったら、踏切に飛び込むつもりだった

………そんな気がした。踏切のカンカンって音聞こえたから

君がこっちに来るから飛び込めなかった

飛び込まないでよ、私、追いかけるからね、泣くからね

君を泣かせるわけにはいかないね

……っ

何であんなこと考えたのか、今でもわからない

楽しいこと、ある?

なにもない

私と会うこと、楽しみじゃなかった?

楽しみだったよ

楽しみなことあると、少しだけがんばれるよね

うん、昨日の夜はワクワクして眠れなかった。いつもは暑くて不安で眠れなかったのに、昨日はワクワクしてた

遠足前の子供か!

でも、私も同じだな

会うのが楽しみで寝てないんだよね、髪型も何回も直した、変じゃないかな?

え? そんなこと言われたら照れるよ

とても似合うよ

あ、あれ……冷房ついてるのに暑い

ほ、ホントだ

こんな日は、クリームソーダが美味しいね

クリームソーダって良いよね、素朴で

お子さまランチの隣にあるイメージだったけど、最近のはお洒落だよね

あまり変わらないけど、何だろ、昭和レトロなお店だからかな

大人の休日って感じだ

そうだ、色んなお店のクリームソーダ飲みに歩こうか

うん

無理はしないでね

君もだよ

わかってる

決めた

え?

君とクリームソーダ飲むために、僕は働くよ

何それ

色んな土地でクリームソーダ飲むんだよ。そしたら、交通費とか必要。だから働かないと

この時間はクリームソーダ代のため、この時間は交通費のためだ……って考えながら働くよ

そう思えば8時間労働も残業もしんどくない

いや、しんどいよ

でも、ポジティブだね~

夏コミはどうすんの?

実は夏コミ行ったことないんだ

冬コミしか行ったことない

一緒に行く?

私も社畜だから死ぬほど働いて、休みはお昼寝三昧、何もしていないから軍資金ならあるよ

じゃあ、行こう

でも、残念

夏コミやってるの、今、だから

それは、残念

会社カレンダーしかみてないから、気付かなかった

あるある

じゃあ、来年だね

冬じゃなくて?

夏と冬って薄い本の内容が違うんだ

夏の薄い本が読んでみたいんだ

そ、そうなんだ

来年は貴方と夏コミ行けるように、私もがんばろう

仕事を変えないと。今のままだと初日が行けないもの

そうだね。僕も夏コミ4日間行けるような仕事探そう

来年は3日間かもしれないよ

そうだね

私、こっちに戻ろうかな

貴方が踏切に飛び込まないか心配だから

来年の夏コミまでは、そんなことしないよ

来年の夏コミ以降もやめてほしいよ……決めた

来月にはこっちに戻るから!

僕のために無理しないで

私、気付いたの

貴方と話をしていると、心が楽になるってこと

膨張した心の苦しみが、シューって萎んだの……貴方の近くにいたいの

……実は、僕も同じだよ。君と会ったら、昨日まであった息苦しさが消えていた

帰ってきて欲しい

うん、待っててね

………なんて、話があったらどうします?

何をバカなことを

彼は踏切に飛び込んで死んでしまった

だから、私は彼を追いかけるだけ

どれが夢で、どれが現実か……選ぶのは貴女です

これが現実でしょ

まもなく通過する貨物列車に飛び込むの

愚者な私に相応しい最期

待っていて……

それでは、さようなら

ところで、貴女は

喋る猫の存在を受け入れられるのですか?

現実に、車掌服の二足歩行の喋る猫がいることを……

……っっ

……は、はい

………

……えっと………

………

……

………

………

………

(周囲の視線が痛い)

■日、そっち帰る、午前11時、喫茶やおい、待ってて

え? あ……う、うん

電車の中だから切るよ

う、うん

……勢いで約束してしまった

……ちゃんと伝わってるかな

メールもしとこう

よし!

休みの日に誰かと会うなんて、いつ以来だろ

久しぶりに彼の声を聞いた……ただそれだけで、私の気持ちは癒されている

彼に会うためにも……がんばろう、私

喫茶やおい、一人で入るの緊張する

待たせて、ごめんなさい

……っっ

久しぶりだね

うん!

どれが夢で、どれが現実か……選ぶのは貴女です

きっと、誰にもわからない

ご注文はお決まりですか?

うわ、キグルミ?

こんな、暑いなか大変だね

中には裸族がいるのかも?

こら、背中のチャックに触らない!

本日の喫茶やおいは猫カフェです!

店員一同、猫耳、猫のキグルミでおもてなしします

夏コミ行けないうっぷんはここで晴らすニャ!

な、なるほど

それで、ご注文は?!

クリームソーダ2つで

かしこまりました

当店オリジナルのクリームソーダ「ハッピーエンド?」です

これがハッピーエンドであると、祈っていますよ

ここのクリームソーダ、有名なんだよ。二人飲むと幸せになれるって

貴方と飲みたかった

貴方に幸せでいてほしいから

僕も君に幸せでいてほしい

どうか、ささやかなハッピーエンドを彼に

どうか、ささやかなハッピーエンドを彼女に

夏の社畜と電車とクリームソーダと……

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