一群の影が遠くからこちらに向かってくる。
それは、
本隊に一番早く合流したスダルギアだった。
隊に戦傷はなく、
スダルギアの不敵な笑みにも曇りがない。
一群の影が遠くからこちらに向かってくる。
それは、
本隊に一番早く合流したスダルギアだった。
隊に戦傷はなく、
スダルギアの不敵な笑みにも曇りがない。
一番乗りか。
軍師様よ、予定通り
誰も殺さず手懐けておいたぜ。
本当か?
雇われ兵だったからな。
それで?
まさか……
そのまさかだ。
大丈夫か?
裏切ったりしないか?
元々金で雇われた兵だ。
誰も出せない金額を
くれてやったよ。
それに砦を守り続けたら
三倍の金をやると
約束してきた。
や、やるじゃん。
ちょろいもんさ。
弱冠、引き気味のウルに、
スダルギアは平然とした顔で言ってのけた。
流石だなスダルギア。
今回は俺に分がありすぎただけだ。
そのようだ。
だが、大差なく次の者が
来たようだぞ。
レジーナの視界には
見覚えのある男が一群を率いている。
レジーナの前まで駆け付けたその男は
やはり傷一つないギュダだった。
姫、遅くなりました。
うむ、ギュダよ、
如何にしてウルの条件を
満たしたか聞かせてくれ。
説得したまでです。
後ろにいる兵が
ひそひそと何かを話している。
「あれが説得か?」
「後ろにいる俺達でさえ怖かったぞ」
どうやら説得と言う名の
脅し文句だったようだ。
説得か?
まぁ、広い意味での説得です。
この状態なら危険だが
アズール城を落とせば
完全に掌握出来る。
そんなとこだな。
あまり時間は置けないがな。
そのへんは問題ない。
直ぐに片付けるつもりだ。
むしろ心配なのは……
いや、大丈夫みたいだ。
最後の一群が遠景に確認出来た。
当然ガンツだった。
うっそ。
俺が最後?
まぁまぁ頑張ったのに。
おい、
鼻血が出てるぞ。
いやぁ、存外手強い相手だった。
条件は守ったのか?
殺してはないだろうな。
分かってるって。
だから殴り合いで決めるんだろ?
相手も良い漢(オトコ)で
運よく応じてくれたぜ。
片方の鼻を押さえ
鼻血を吹き出させるガンツは、
実に清々しい汗を滲ませている。
どうやら大将どうしの殴り合いで
勝負を決めたらしい。
マジか……
よっし!
この勝負ガンツの勝ち!
理由は聞いてて
面白いからだ。
異議なし。
そもそも勝負をした
つもりはありません。
おっし、
出世競争一番乗り。
つーか、ガンツって
客将だろ。
ウルの小さなツッコミは
風に消えていった。
そしてその風下に
アズール城がある。
元々はイシュトベルトの支城だったが
現在、ナバールの軍勢が
居座っているようだ。
その証拠に遠くから見える城の旗は、
斜めに走る三色ストライプである
イシュトベルトのものではなく、
真っ黒なナバールのものだった。
ギュダよ。
一先ずあの城を拠点とする。
はっ。
だが、どうやって
攻め落とす?
小さい城つったって
あの固い城門を破るのは
至難の技だぞ。
それは私が考えてある。
レジーナの言葉に
ウルは首をひねる。
そしてガンツとスダルギアは
楽しそうな顔を見せたが、
ギュダだけは
嫌な予感で顔を歪ませた。