――数刻前、編成終了後。
ほんとに大丈夫かよ。
何を言っている。
自分の言った事だぞ。
まぁそうだけど。
――数刻前、編成終了後。
良い感じになったん
じゃねーの?
思ったよりバランス良い
感じになったな。
やれやれ。
姫もお遊びがすぎる。
ギュダ殿を慕う兵が
僅かに多いようですな。
少しホッとしているように
見えますが……
茶番は終わりだ。
やっと最低限と言える
軍備が整った。
貴様にも活躍してもらうぞ。
ギュダ殿に比べれば、
俺の些末な能力なんて
見劣りするでしょうな。
お喋りは終わりだ。
姫、いよいよ進軍です。
まずはアズール城を
落とす必要があります。
ガンツの言葉を適当に流し、
ギュダはレジーナに進軍を促す。
うむ。
アズール城を落とす前に
付近の三つの砦を
押さえるべきでしょう。
三つもか…………
折角だし軍師様に
策を授けてもらおうか。
スダルギアが軍師と呼ぶ相手――
それはウルだ。
ウルは弱冠照れくさそうに
顔を背けた。
ぐ、軍師……
オ、オレは
友人枠でいるんだぞ。
友人の軍師だろ?
な!?
何でもよいから
聞かせてくれ。
レジーナは真っ直ぐにウルを見つめ
素直に意見を求めた。
ウルは現状を頭に巡らしているのか
少し俯いた後、
スダルギア・ガンツ・ギュダの順で
テンポ良く視線を移した。
砦及びアズール城の情報は?
アズール城は、
アイヅガルドとイシュトベルトの
国境にある城だ。
現在、城主はナバールの将。
三つの砦には際立った将は
居ないようだ。
兵はそれぞれ50程度。
なるほど、
その辺の根回しは流石。
初めて敵より数が多いな。
それじゃあ、
順番に数で潰せば
いいんじゃねーの?
つまんなさそーだけど。
それでは遅い。
私が望むのは、
昼には一気に
アズール城を攻める策だ。
サラッととんでもない事を呟くレジーナ。
それを聞き、
ウルは途中まで考えた策を捨て、
新たに策を練り直す。
そこからは意外に早く、
直ぐに皆に伝えられた。
各隊それぞれで
砦を攻め落とし、
アズール城手前で合流。
その後、
一気にアズール城を攻める。
それなら、
それぞれ数は同等程度。
ちょいとは面白いか。
ただし!
誰も殺さない方法で砦を落とす事。
砦の兵は今後も守備隊として
残す必要があるからな。
ええっ!?
方法はそれぞれが
考えろってことでいいのか?
オレが軍師ってんなら
これから策を預ける将たちにも
自ら動考えてもらわねば
ならない時がくる。
これはその入門編だ。
しかし各将に
策を捻り出させる策か。
実に面白いな。
それはさっきも言った通りだし、
お前のしたいようにする為だ。
ウルも望む条件を
出しただろう。
……まぁ、でも
ちょっと厳しすぎたか。
無理があるよな、やっぱり。
なんだ、そんなふうに
思っていたのか?
やってこれるよそれぐらい。
あ! あれは……
一群の影がこちらに向かってくる。
誰が一番乗りか?
期待と心配が入り混じりながらも、
ウルは目を細めて一群を注視した。