村娘

ここがお狐様がいらっしゃる神社になります。

花蓮

うーん、でもお狐様が見当たらないわね。

しかし、なかなか人が多いですね。

村娘

願いを叶えてくれるという噂を聞いた男性の方々が、中部地方中から集まっていますからね。

孤黒

ひそひそ。

孤白

ひそひそ。

煌炎

なんだぁ、あのちびっこい犬どもは。

村娘

あの方々はお狐さまに仕えていらっしゃる神使です。

煌炎

ちょっくら女狐の居場所を聞いてくらぁ。

村娘

え!?
だ、大丈夫でしょうか!!

煌炎の思い切りの良さに驚く女彼女を余所に、煌炎は二匹の神使の前に仁王立ちになる。

煌炎

おい、犬っころども。

孤黒

お主ら何奴、失敬な!!!
犬などといっしょにするでない!

孤白

俺たちは誇り高き狐の神使!!
なめた口を聞くとふっとば・・・。

憤慨した二匹が煌炎の顔を見た瞬間、その表情が一気に青ざめていく。

孤白

すっ・・・。

煌炎

す?

孤白

すいませんでしたあああああああああああ!!!!!!!!!!!

孤黒

なんたるご無礼を・・・!!!!
お許しください!!

花蓮

何この状況・・・。

少し離れた場所で見ていた一行は狐たちの変わり身の早さにあんぐりと口を開ける。

孤黒

狐王皇家第4御子息、煌炎様!!
あなた様は今沖縄にいらっしゃるはずじゃぁ!?

煌炎

あ?
なんで俺のことわかるんだよ。

村娘

狐王皇家!!???

煌炎の素性を知り、女性も驚く。

孤黒

狐界隈で狐王皇家の皆様のことを存じ上げない者などいませんよ。

孤白

なんせあの葛葉狐様の末裔だからな!!

そう言って2匹は煌炎の周りをぴょんぴょん飛び跳ねる。

煌炎

わーったわーった、落ち着け。

孤黒

はいっ!!

孤白

ういっす!!

花蓮

めちゃめちゃなついてる。

煌炎

とりあえず、俺たちはお狐様ってのを探してんだけど・・・今日はいねぇのか?

孤白

いや、喰蝶(カチョウ)様はまだ出てきてないだけで社内にいらっしゃるぜ!!

煌炎

喰蝶?

孤黒

我らが主の名です。

孤白

ぬ!!
それで思い出した、今日こそ喰蝶様を止めねぇと!!

孤黒

うむ、こうなったのも我らが甘やかしすぎた責任でもありますからね。

煌炎

・・・どういうことだ?

煌炎が率直な質問を投げかけると、狐の神使たちは顔を見合わせてなにやら相談を始めた。

孤黒

主の過去を勝手に話してもよいのだろうか。

孤白

煌炎様だし大丈夫だろ。

孤黒

しかし、煌炎様以外の人間も居ますが・・・。

孤白

煌炎様の連れの人なら問題ねーんじゃね?

そうして二匹は互いに深く頷くと、話がまとまったのか煌炎たちに向き直り口を開いた。

孤白

喰蝶様の家系は煌炎様と同じで妖狐を祖先に持ってるんだ。
まぁ、葛葉狐様ほどは妖力を持ってはないけど・・・。

孤黒

ただ、喰蝶様の祖先は妖狐だけではございません。
そのため喰蝶様はとても珍しい、2種類の先祖返りを持った子として生まれてきたのです。

2つも先祖返りを!?

花蓮

ごめん、私よく分からないんだけど2つ同時に先祖返りが起こるのって珍しいの?

珍しいも何も、そんな話聞いたことすらありません!

孤黒

今まで突出して出た先祖返りの方で親類の寄り合いを作って暮らしていたのですが、喰蝶様はどちらも中途半端で親類から疎まれてしまいました。

孤白

それで自分自身がコンプレックスの塊になった喰蝶様は妖術を使って魅了することで自分を肯定してくれる人を欲しがってたんだ。

孤黒

我らはそんな喰蝶様を不憫に思い、当分喰蝶様の好きにさせてあげようと考えたのです。

煌炎

で、ネガティブ思考が暴走してこうなったってわけか?

孤白

いや、それがだな・・・。
むしろポジティブ思考になって、このハーレムの現状を楽しんでいるんだよ。

煌炎

は?

孤黒

最近なんて『毎日がちょー楽しい♡』などと満面の笑みで言っているしまつです。

孤白

なんでいい加減止めなきゃやばいって思った俺たちは『喰蝶様の暴走を抑えられた者の願いを1つ叶えてやる』と人間どもに触れ回ったら・・・。

孤黒

いつの間にか『惚れさせたら願い事を叶える』に噂が変貌してしまっていたのです。

孤白

おかげで怖いもの見たさに来る人間どもが増えて、このどうしようもない有様さ。

孤黒

何たる失態!

煌炎

逆効果だったってわけな。

ちなみに、妖狐ともう一方の先祖返りは何なのですか?

孤白

そりゃぁ・・・。

神使が口を開こうとしたとき、前方の神社の扉が開き中からそれはそれは美しい女が現れる。

喰蝶

―・・・。

孤白

絡新婦(ジョロウグモ)だよ。

七雄狐の嫁入りの章【承】

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