ぐぅ・・・
とうとう新潟県まで来ましたね。
もう真っ暗・・・でも全然宿がないし、飲食店すら見当たらないね。
腹が減って死にそー。
今回は同意です。
私もお腹が空いてしまいました。
ぐぅ・・・
腹で返事してんなよ、バーカ。
ちっ違うもん!!
私じゃなくてお兄さんだし!!
えー・・・・。
そのような会話をしている中、背中に野菜を背負った女性が声をかけてくる。
もし、宿にお困りでしたらうちによって行きませんか?
えっ?
あっ・・・出過ぎた真似を申し上げて申しわけありません!!
んなことねーよ。
むしろ助かるわ。
ぽー・・・。
!?
もしやこれは。
何じろじろ見てんだよ。
はうっ・・!!
すみません!!
あ、どうぞこちらに!!
はっとした彼女は慌てながらも家に案内してくれた。
うまい。
煌炎一行が彼女の案内で家に着いたのち、さっそく彼女は食事を振る舞ってくれた。
煌炎様、少しは遠慮して食べてくださいね。
無理。
今度蕎麦ぐらい食べさせてあげますから。
はぁ!?
ただの蕎麦じゃねーよ、へぎ蕎麦も知らねーのかポニー。
へ、へぎ蕎麦?
へぎって何?
片木(へぎ)っていう器から名前がきてんだよ。
じゃあ普通の蕎麦とは器が違うだけってこと???
はぁん!!??
ごごごめんなさい!!!!!
見てわかんねーのか、普通の蕎麦とは違って一口サイズに手たぐりされてんだろーが!!
そもそも食ってみたらわかるだろ!?
布海苔を使ってっからコシがめちゃめちゃ強ぇーし。
はっはひぃ!!!
食べてみます食べてみます!!
こんの馬鹿!!!!
何わさび入れてんだ、へぎ蕎麦にはからしだろーが!!!
まぁまぁ。
わさびで食べても全然いいんですよ。
お二人とも仲がよろしいんですね。
どこが・・!!??
どこが・・!!??
息ぴったりですね。
ふふ。
この度は本当に助かりました、ありがとうございます。
いえいえ。
この辺りは宿や飲食店がないものですから。
旅人が来たら泊めて差し上げるのが道理というものです。
それに・・・・。
彼女の瞳は煌炎に向けられる。
その頬は心なしか赤みを帯びていた。
も、もしや煌炎様が・・・。
はい。
え!!
私の夫に似ているのです。
・・・・・・なんだ。
あら?
どうかされましたか??
い、いえ何も!!
旦那様がいらっしゃったのですね。
失礼ですが旦那様は今どちらに?
賽の何気ない質問であったが、途端に女性の表情が曇っていった。
もう・・・1年はお会いしてませんわ。
・・・・お話を伺っても?
えぇ、この縁ですもの。
・・・私の夫はお狐様に魅了させられてしまったのです。
・・・狐?
えぇ、この中部地方を治めていらっしゃる『狐の嫁入り様』ですわ。
!
未練がましい女は嫌われてしまいますよね・・・、まだ夫が私の元に帰ってきてくれると思ってしまっている。
魅了されたってどういう経緯でだよ?
この地方では有名なんです、お狐様チャレンジ。
お狐様チャレンジ・・・?
『お狐様を惚れさせることができれば、願い事をなんでも一つ叶えてくれる』と。
つまり、あんたの男はそれにつられちまったということかよ。
つられただなんてそんな、夫は欲にかられるような方ではございません!!
親戚を救うためです!!
親戚の方を救うため?
えぇ、先に夫の親戚の方が魅了されてしまって・・・夫はそれを解放してもらいにチャレンジをしに向かいました。
・・・失敗してしまったんですね。
・・・えぇ。
半ば塞ぎ込むように俯いた女の目には、涙がじわりと浮かび上がっていた。
夫を助けたい・・・・、でも私は女です。
お狐様チャレンジには参加できません。
おねぇさん・・・。
煌炎様。
・・・言い出すと思った。
ご察しの通り、私たちで彼女の旦那様を救って差し上げませんか。
このように親切にしてくださっているわけですし。
どーせおたくのことだ、断ってもしつけぇんだろ。
よく私のことをお分かりで。
仕方ねぇ。
うまいもんも食わせてもらったし、それに見合う働きくらいはしますかね。
・・・煌炎さん。
あっ・・・ありがとうございます!!
どっちにしろ狐の嫁入りには会わなくちゃなんねェんだ。
さて、女狐狩りといきますか。