喰蝶

今日もたーくさん来てるわね♡
さぁ、私を惚れさせてみなさい!

喰蝶が集まった男たちに一声かけると、列で並んだ順に男たちがパフォーマンスを始める。

ストレートに愛の告白をする者もいれば、くどくどと喰蝶のことをほめたたえる者がいたり、自分の特技を披露したり、自分のステータスを誇示する者もいた。

あなた様は天女のように美しい!!
好きです、どうか俺と結婚してください!!

喰蝶

まぁ、嬉しい♡
でも普通過ぎてつまらないわね。

事あるごとに玉砕していく男たちは、喰蝶にいなされた後、神殿の中の方に入っていく。

煌炎

なんだありゃ。
玉砕した後、あいつらどこに向かってんだよ。

孤白

振られてもなお、人間どもは喰蝶様に魅了された状態だ。
気にいった男はハーレムに入れて、いまいちな男は小間使いとして働かせるように社内に収容してんだ。

花蓮

つまり、皆魅了されたら家に帰らないってこと?

孤黒

まぁ、魅了に打ち勝つ強靭な意志がなければまず帰ることは不可能でしょう。

村娘

私の夫も社内にいるということですね・・・。

そのようですね。

孤黒

・・・今日もダメそうですね。

孤白

長年一緒にいるけど、喰蝶様の好みのタイプなんて知らねーしな。

孤黒

はぁ・・・、いかにこの事態の収拾をつけましょうか。

煌炎様、とりあえずお狐様を惚れさせなければ話は進まないようです。
頑張るしかありませんね。

煌炎

なんだこのくっそくだらない流れは・・・。

花蓮

こ、煌炎さんあの人を口説くの!?

煌炎

・・・・。

致し方ありませんね。
まずは私が行ってきます。

孤黒

ご協力感謝いたします!!
どうか我らが主の暴走を止めてください!!

喰蝶

おやおや?
今日は中々上玉がいるじゃん。

初めまして、お嬢さん。

喰蝶

顔は合格!
さて、あんたは何を見せてくれるの??

私はこれといった特技は持ち合わせていません。
しかし・・・。

賽は話を進めながら、持っている槍を回転させて構える。

あなた様のことをこの武力をもって命に代えてもお守りします。

喰蝶

・・・。

なので、私と添い遂げてくださいませんか?

賽は喰蝶の瞳を熱がこもった目で見つめる。

以前、暗殺者として培った演技力が存分に発揮されている様子を目の当たりにして、もしかして成功するのではないかという期待が一行の脳裏によぎったが・・・。

喰蝶

武力を誇示する男は以前も山のようにいたわ。
つまんなーい。

そう言って喰蝶は赤い瞳で賽を見つめると、賽の瞳が段々と虚ろになっていく。

喰蝶

でも顔はもろ好みだし?
あんたはそこの社じゃなくて、向こうのハーレムに行っててちょうだい♪

了解しました・・・喰蝶様。

花蓮

あ、お兄さんが・・・!!
煌炎さんどうしよう!

慌てた様子で花蓮が煌炎に話しかけると、既にそこに煌炎の姿はなかった。

花蓮

あれ???
煌炎さん!!

孤黒

煌炎様ならあちらに。

指された方向に視線をやると、ハーレムに向かって足を運ぼうとする賽を阻むかのように、煌炎は喰蝶の前に立っていた。

喰蝶

あらあら??
美形さんがもう一人♪
あなたは何を見せてくれるの?

煌炎の口から出る口説き文句はどのようなものかと、微かに後方で期待を寄せた花蓮であったが、予想は大きく外れた。

煌炎

おい、いつまでオタサーの姫プレイしてんだよ。
いい加減イタイって気づいたら?

喰蝶

・・・・へ?

予想だにしない言葉に一瞬制止してしまった喰蝶であったが、その意味に気づくと徐々に怒りと恥ずかしさで顔を上気させた。

喰蝶

い、イタクなんてないし・・・!!!
というかあんた、早くあたしを褒めたたえなさいよ!
ホントつまんないわ!!

煌炎

・・・俺も必死に考えてんだよ、でも褒める点が見つからねー。

その言葉に喰蝶はさらに目を丸くする。

喰蝶

ど、どうして魅了が効かないの!?
私が『つまんない』って言ってるのに!!

孤白

!?
ふつうは喰蝶様に『つまんない』って言われると暗示がかかって魅了状態になるはずなのに!!

孤黒

さすが狐王皇家というべきなのでしょうか・・・。
もしかして喰蝶様の家系より強い妖力の妖狐が祖先だからですかね・・・。

煌炎

あ?知るかよ。
・・・・・あーだめだ、クソ生意気なガキにしか見えねー。

喰蝶

な、な、・・・。
そんなことがあるなんて・・・。

煌炎

・・・。

喰蝶

最高じゃない!!!
ようやく見つけたわ、私の王子様♡

煌炎

は?

七雄狐の嫁入りの章【転】

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