圧勝――。

その言葉に恥じる事のない結果。



兵士達の我が身を賭けた戦いは

火を見るよりも明らかであり、

積まれた金貨の山は

軍備を整える金をとしては

充分すぎるほどだった。

ギュダ

姫、兵士達の活躍により
現在、920万ガロンの
勝ち分があります。
負けた兵士達の分を差し引いても
充分な軍資金となりましょう。

スダルギア

…………。

スダルギアは何も言わずに静かだった。



つまらなそうな顔を露骨にしている。

それは賭けに負けたから――

そう言うには違った雰囲気を感じた。

ガンツ

相変わらず細かい計算は
早いですな、ギュダ殿。

ギュダ

貴様の勝ち分は少なくて
計算しやすかったからな。

ガンツ

そりゃよかった。
どうもこうゆうのは
苦手なもんで。
皆勝ってたし、引き際だけ
褒めてやってくれ。

兵士達は圧勝の結果に安堵を見せている。

それはギュダもガンツも

変わらぬ事だった。

レジーナ

スダルギアよ。
全財産はいくらだ?

レジーナの短い質問に

スダルギアの口元が緩んでいた。

スダルギア

あとざっと600ってとこだな。
お嬢ちゃんの兵達が
強運を見せつけてくれたからな。

金額で言えば逆転したことになる。



だが、

スダルギアに焦る素振りは

全く見受けられない。

レジーナ

ならばここにある
勝ち分の920と
私自身の100……
全て賭けるぞ。

ギュダ

!!

スダルギア

…………

ギュダ

何を申されているのですか!
軍資金は充分ですし、
続きを賭けるにしても
全く理に合いません!
さらに姫の身まで
この状況で賭けるなど
もってのほかです!!

ガンツ

それくらいの計算なら
俺にでも分かる。
レジーナ姫?

レジーナ

全く皆、勘違いしておる。
軍資金など二の次。
私の求めているものは
スダルギアお前だ!

スダルギア

ククククク、
熱いねぇ、お嬢ちゃん。

ギュダ

そ、それにしても
割りに合いませぬ。

レジーナ

全てのみ込む……
そう言ったはずだ。
今は対等な位置に立っただけで、
平伏させるには
相手の得意とするルールで
打ち負かす必要があるのだ。

ギュダ

このような男に
それほどの価値があるとは
思えませぬ。

スダルギア

流石お嬢ちゃんはお目が高い。
金など
すぐに幾らでも湧いて出てきて
消えてなくなる泡のようなもの。
人の心にチラつき
纏わりつけばベタベタとする。
固執する必要などない。

レジーナ

金が必要なのではなく
金を上手く使う者が
必要なのだ。

二人の間にもう誰も入れなくなった。

こうなったら止めれない。

そう確信したギュダは

真っ直ぐとレジーナを見据えて

はっきりと伝えた。

ギュダ

姫、私は負けを許しません。
必ず勝ってください。

レジーナ

無論だ。
これはもう
確率とか策と言う話ではない。
レジエレナかスダルギアか……
それだけの話だ。

スダルギア

ククククク。
勝負はカードを一枚づつ引き、
高い数字の持ち主が勝ち。
分かり易くていいだろ?

レジーナ

うむ。

たった一枚のカードをめくるだけ。

それだけの勝負。

この小さな紙きれに己の運命を

全て賭けているのだ。

レジーナ

開けるぞ。

勿体ぶることなく

そのまま表に向けるレジーナ。

ガンツ

!!

ギュダ

馬鹿な……

カードの数字は――5だった。



1から21まである

このカードの中では

とても安心出来る数字ではない。

スダルギア

ククク、
平伏させるには
相手の得意なルールで
打ち負かすとか言ってたな。
それでそのざまか。

レジーナ

まだ分からぬ。
これより弱いカードは
まだ四枚もある。

スダルギア

確かに。
五分の一なんて数字は
出てもおかしくない確率。
だが、俺がイカサマをする事を
考えなかったのか?
誰もが俺のイカサマに気付かない。
まったく能天気なものだ。

ギュダ

ぐっ!
貴様……。

スダルギア

ククク、
何を言おうがもう証拠など
決して出ない闇の中だ。

そう口に告げたスダルギア。

勝利を確信したような笑みは、

レジーナ軍全員の心臓を

氷漬けにしたように冷たくさせた。





そしてゆっくりとカードを表向ける。

スダルギア

1だ。

ガンツ

え!?
どうゆうこった?

ギュダ

…………

イカサマをしたのはおそらく事実。

だが、そのイカサマはスダルギア自身を

敗北させる為のものだった。



その不敵な笑みは

自らレジーナに白旗を上げたものだと

感じさせた。

レジーナ

スダルギアよ。
お前は私が探していた
人間の内の一人だ。
我が横に侍り
祖国奪還の支えとなってくれ。

レジーナの思いは

会話を聞く周りの兵士達の心も

熱くさせていた。



そしてスダルギアは

色眼鏡をはずし、

左右違う色の瞳を晒してから告げた。

スダルギア

俺の両眼はそれぞれ
光と闇を捉えてきた。
それを役立てるのは
お嬢ちゃん……、
あんたの元でしか
ないように思えたよ。

レジーナは満面の笑顔を返した。



チナ村の教会での出会いは、

夜明けと共に

新たな始まりを思わせた。

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