【第二十一幕】
『転生から始まる、異世界事情調査』
【第二十一幕】
『転生から始まる、異世界事情調査』
私はあの真っ暗な世界が好き。
面白いのは、同じ暗闇なのに昼と夜では感じ方が全く違うところだ。
時刻は午後14時20分、神隠し公園のベンチで腰をかけた私はそのまま目を閉じた。
マチさん、そのまま聞いて下さい
貴方には今から『転生術』を会得していただきます
おそらく次に瞳を開けた瞬間
目の前には惑星マルクの景色が広がっているでしょう
「転生先の場所って、選ぶことはできないの?」
はい、行ける場所は一つしかありません
地球ならこの『神隠し公園』
マルクだと『プリス草原』
そこへ繋がります
「プリス草原かぁ……」
私はその場所を知っている。
忘れたくても忘れられない場所。
なぜなら、マルク時代特に仲が良かった人の名前が使われているからだ。
『時の姫』と呼ばれていて、性格は少し変わっていたけれど、よく話しかけてくれた子だった。
彼女も私のことを忘れているのだろうか。
そんな不安が頭を過ぎる。
駄目だ…………、集中しなきゃ。
マチさん
どうですか?
何か掴めそう?
「いや、そもそも」
「目を閉じた後は何をしたらいいんですか?」
自分がこの世界から完全に消失するようなイメージをしてください
そう、まさに煙のように!
または分子のように!
ざっくりしてますね
マチ、できそう?
「う、うん……」
「やってみる!」
この世界から消えていく感覚
似たような体験はしたことが過去にもあった。
そう、惑星マルクの神殿で創造神ミライに追放された時だ。
アクアくんはあの出来事全てに理由があると言っていた。
私にはユウキくんを地球に帰すのと同時に、その原因を突き止める指名があると思う。
そして、向こうに行く前に大切なこと
聞いておかなきゃ。
「アクアくん!」
む!
は、はい
「聞きたかったことがあるの」
「アクアくんとリーフはどうしてこの地球に来たの?」
……
確かにそれもそうよね
そもそも都合よくこちら側(地球)にマチの知り合いがいること自体が不思議だった
………………
僕は現在、いつどこから監視されていても不思議ではない状況です
そして彼女(リーフ)も……
か、監視……!?
マチさん
これはただのお願い事で、強制するつもりはありません
出来ればあなた達をこんな危険なことに巻き込みたくなかった
「お願い事って?」
はい
それはユウキさんを探すのと同時に
【惑星マルクの調査】
マチさんから見て、明らかにおかしい現象がないかをさりげなく調べてほしいのです
い、異世界で何が起こっているんです?
行ったことないけどさ
すいませんが今この場で……
僕の口から全てをお話することはできません
ただお答えできることとして、自分はある組織の命令で彼女(リーフ)を追ってここまで来ました
……組織?
なるほど
その組織が黒幕なんですね!
あ、いや……まあ
それ以上は……なんにも…………
ねぇ………………
物語的にも………つま…………
ある組織の存在
依頼ではなく、『命令』
アクアはリーフを追ってきた
ユウキくんを無理矢理に転生させた『薬』の存在
マルクは危機的状態
まだ、完全にパズルのピースが揃ったわけじゃないけど、
そっか、みんな私の知らないところでこんなにも必死で……
自分だけだ、何も知らずにのほほんと暮らしてきたのは、
でも今度は、
私が頑張る番だ!
「ありがとうアクアくん」
「それだけ分ければもう十分だよ」
ま、マチ!
体が!?
薄くなってる!
この世界が彼女を認識出来なくなってきているんです
存在の抹消……転生術を会得しましたね
「うん、そうみたい」
「みんな、ありがとね!」
マチさん!
兄貴を……兄貴をよろしくお願いします!
でも危険なことだけはなさらずに!
「ありがとうコウタくん」
「お兄さんは必ず連れて帰るから安心して?」
すいませんマチさん
本当ならすべての事情、事実をお話するべきなのですが……
「大丈夫、ありがとうアクアくん」
「全然十分だよ! あとは私が直接この目で見てくるから」
……マチ
「ん?」
帰って来なかったりしたら……
私も乗り込むから!
「ふふっそうだね!」
「絶対帰るつもりだけど、もしもそうなった時は……」
「待ってるね!」
目蓋を開くとそこは辺り一面、緑一色だった。
開口一番「懐かしいなぁ……」と一言だけ。
眉毛の下の方から塩水が勝手に湧き出てきて、
自身の視界を遮る。
ああ、やっぱり私はマルク人なんだと、今この瞬間改めて思い知った。
やっぱり来ちゃったんだね
……え?
声は後ろから
ゆっくりと振り返る
私の心に追い打ちをかけるかのように、
思い出の中に閉じ込めていた彼女は突如現れた。
プリスです
お帰りなさい、ベルちゃん!
た……
グス…………
ただいま……プリスちゃん…………
第二十一幕 終