2025年4月14日(月)
10:02 AM
2025年4月14日(月)
10:02 AM
ニッコニコ
誰だ、一体……。
なぜアタシを知っているんだ?
あの……すみません。
どちら様でしょう?
あー……。
忘れちゃったかー……。
まあ、仕方ないよね。
茜ちゃん、小っちゃかったもんね。
……小っちゃ……かった……?
……小っちゃ……
……かった……
……アタシ……
* * *
ねぇ、あかねちゃん!
さっくんのおにぎりを
勝手に食べちゃダメよ。
だってぇ……。
……。
理由があるのね。
言ってご覧なさい。
……さっくん、
全然食べられないみたいだから。
せんせい、ぼくも食べてあげようと
思ったんだよ?
でも、もうお腹いっぱいだったから、食べれなかったよ。
そう……。
ねぇ、あかねちゃん。
さっくんはね、ゆっくり食べれば
もう少し食べられるの。
だから、次からは食べられなさそうと思っても、もう少し待ってあげてね。
……はーい……。
でもね、先生、あかねちゃんのそういう所キライじゃないのよ。
ううん、それどころか
大好きよ。
え?
だって、あかねちゃんは、
さっくんを助けようと思って
おにぎりを食べたんでしょう?
……こくり
それはね、
あかねちゃんの持つ
人を思いやる気持ちだもん。
先生、それは応援するわ。
だから、次は
ちゃんとさっくんにも
どうするか聞いてね。
……わかった、さとうせんせい。
* * *
……さとう先生……
もしかして……、
さとう先生?
くすのき園の……?
そうよ、思い出してくれたー?
少女は記憶の奥底から
女性の事を思い出すと
唐突に胸の奥に何かがこみ上げてきた。
……せ
先生ッ……
先生ーーーー!!
ど……どうしたの、茜ちゃん。
そんなに泣いて……。
先生……
アタシ、どうしたらいいか……。
もう、わからなくて……。
うあぁぁぁ……。
くすのき園が解体されてから
もう10年以上……。
きっと、ツラい目にあってきたのね……。
女性は泣き崩れる少女を
ギュッと抱き寄せた。
少女は女性の腕の中で
しばらく泣きじゃくっていた。
* * *
ごめんなさい、先生……。
取り乱してしまって……。
いいのよ、茜ちゃん。
それにしても、
すっかり大きくなったわね。
先生、びっくりしちゃった。
えへ……。
他のみんなも、
大きくなったんだろうなぁ……。
……そうだ。
さとう先生なら
だいちゃんの手がかりを
何か知っているかもしれない。
あの……さとう先生……。
なぁに、茜ちゃん。
先生なら覚えていますよね?
だいちゃんとさっくんの事。
だいちゃん?
はい。
アタシといつも一緒にいた、
だいちゃんとさっくん。
今二人がどうしているか、
先生なら、何か知っているかなーって。
んー……。
さっくんの事は覚えているけど……。
だいちゃんって子は
覚えていないわ……。
……え?
本当にそんなお名前だった?
そんな……
まさか、アタシの記憶違い……?
ごめんなさいね、
力になれなくて。
いいえ……。
いいんです。
あ、あと……。
その後、どうなったかって話だけど……
最後までくすのき園にいた子達は
クチナシ園って所に行ったわ。
さっくんもそうね。
でも、その後の事は先生には分からないの。
そう……ですか……。
そうだ、家に帰ったら、
昔の写真とかを見てみるわ。
大丈夫です、先生。
すっかり落ち込んでしまった少女の姿に
女性は考えを巡らせた。
んー……。
そうだ。
ねえ、茜ちゃん。
女性は懐から取り出した紙切れに
さらさらとなにかを書き留めると、
それを少女に渡した。
……これは。
先生ね、今この住所に住んでいるから、
今度遊びに来てよ。
なにか悩みごとの相談とかも乗ってあげられるから。
……先生……。
ありがとうございます。
あ、でも、もう先生じゃないか。
さとう先生は……
アタシにとって
ずっと、ずっと
さとう先生です!
ふふふ、ありがとう。
弱った少女の心に、
その女性の存在はとても心強かった。
思いがけぬ再会
つづく