ギュダ

チナ村での略奪を考慮すると
斬首が打倒ですが如何
致しましょうか。

レジーナ

村民に死者はおらぬ。
頭目よ、
何か申し開きはあるか?

頭目

…………何もねぇ。
いや、残った部下達には
チャンスをやってくれ。

ガンツ

自分はどうなっても構わん。
そうゆう事か。

ウル

…………。

レジーナ

ウルよ。
村民として何か意見があれば
遠慮なく申してみよ。

ウル

村に与えた被害を考えれば
斬首……
それぐらいは当然だな。

レジーナ

本当にそれだけか……

ウル

この者もそれぐらいの
覚悟はあって賊に
なり下がったんだ。

レジーナ

では兄を思う弟に
再度聞こうか。

ウル

知っていたのか……

ガンツ

!?

ギュダ

…………。

夕焼けの空を仰ぎ見るウルは、

ギュッと目を瞑り

歯を噛み締めた後、

はっきりとした口調で告げた。

ウル

意見は変わらん。
その男は俺の兄に違いないが、
村に尋常ではない迷惑と
被害を与えたのは確かだ。
同情の余地なんてないんだよ。

頭目

ウル、すまねぇ。
母ちゃんや父ちゃん、
村の皆にも迷惑
掛けっぱなしだった。
お前にも兄貴らしい事
何一つしてやれなかったな。

ウル

まったくだ。
死んで詫びたって
気がおさま……、あれ?

ウルの瞳から大粒の雫が溢れ出ていた。

言葉とは裏腹な感情が抑えきれず、

どれだけ止めようと思っても

涙は止まらなかった。

ウル

くっそ……

ギュダ

非情な事を言うようだが
こやつの罪状は
斬首以外に考えれぬ。

ウル

お前に言われなくったって
分かってんだよ!!
チクショー!!

ギュダ

…………。
姫、そろそろ。

レジーナ

うむ。
頭目よ。
貴様への措置は変わらぬ。
斬首だ。直ちに実行する。
貴様が願う、部下達への
厚遇は約束しよう。

頭目

ああ、やってくれ。

「私が責任を持って執行します」

そうギュダが言い、

槍を夕焼けの空に掲げる。

レジーナ

あ。

ギュダ

姫、刑の執行中ですぞ。
何でございますか?

ギュダの槍は

頭目の首元で止められていた。



全員の視線がレジーナに集まる。

レジーナ

そう言えば思い出したぞ。

ガンツ

何をですかレジーナ姫。

レジーナ

約束だ。
行軍してくれた後に、
何でも言う事を聞くと
言っていたんだ。
私は君との約束は
忘れていないぞ。

ウル

…………あ……

刑の執行に目を背けていたウルは

涙でくしゃくしゃになった目を丸くさせて

レジーナに向き直った。

ウル

兄を助けて下さい!

ウルの懇願するような必死な声は

普段、横柄に聞こえる話し方ではなかった。

ウル

兄はどうしようもない男だけど
不器用なだけなんだ。
その上、後先をあまり考えず
馬鹿で粗野で乱暴で……

レジーナ

まったくもって
どうしようもない男だ。

ウル

でも頼む。
許してくれとは言わない。
助けてやってくれ。

レジーナ

それが君の願いか……

ウル

そうだ……。

頭目

ウル…………

レジーナ

ならば私は約束を果たそう。
斬首を取りやめ、
村での労働を命ずる。
地の底に落ちた
信用を取り戻す事は、
死よりも過酷な道のりであろう。
チナ村で心血を注ぎ、
村の発展に貢献せよ。

レジーナの言葉は、

兄弟の胸の内に響き留まった。



そして夕闇を背に

村へ帰る兄弟には、

安堵と決意を秘めた笑顔が零れていた。

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