ユフィ

ハル…………

ジュピター

や……ゃりやがった。

ハル

おっしゃーーー!!
勝ったっすよぉ!

 迷宮に響き渡った音は、ハルの攻撃によるものだった。バイススカルソードは地面に転がり、額部分が木っ端微塵に砕かれている。

アリス

ぎゃっはっは、
いいぞオニギリ坊主。
そーゆーのは
ヴァイオレンスで良い♪

コフィン

まさか頭突きで勝って
しまうとは……。

ハル

でも、どこが弱点だらけ
だったんすか?
自分にはあの隙しか
見当たらなかったっすよ。

アリス

やれやれ気付いてないのか?

ジュピター

オイラもあの隙しか
見付けられなかったけど……

アリス

あんなもん、どこでも
ぶっ叩けばぶっ潰せるだろ。
全身弱点、それだけだ。

ジュピター

全然参考にならねぇ。

コフィン

そんなことだろうと
思いました。
まぁ、その心意気は
見習うべきなのでしょうか。

ハル

全身弱点♪
弱すぎっす。

ユフィ

それよりダナンは
どうなの?
大丈夫?

アデル

大丈夫です。
ダナンさんも無事です。

ダナン

アデルちゃん、
それに皆、すまねぇ。

 ダナンの切られた箇所の止血が、見事に終わり応急処置されていた。ようやく上体を起こせるようになったダナンが、皆に謝った。

 誰も責める事もなく、最悪の事態にならなかったのを喜びあった。

ロココ

ハルさん…………
ありがとうございます。

コフィン

…………

ロココ

あっ!
後方から魔気の反応!

ユフィ

バルチャーフレイム!!

アデル

確か広範囲に
火炎ブレスを吐く魔物!?

ジュピター

くそっ!
遠い!!
まずいぞ!

ダナン

っく。
今くらったら
マジでやばいぜ。

ハル

うおおおお!!

 ハルが鬼義理を右手に握り間を詰める。傷付いた身体は満身創痍だが、全速力で間を詰める。

 だが、バルチャーフレイムは首を左右に揺らし、火炎ブレスの予備動作に入った。



 はっきり言って、もう、間に合わ、ない!

ハル

うぇっでぇっす!!

 ハルの悲鳴がこだまする。



 ただ毛躓いて(ケツマヅイテ)転んだだけだった。



 それはさておき、バルチャーフレイムは跡形もなく消滅していた。不思議そうにユフィ達が目を丸くしている。が、すぐに状況を把握して振り向いた。

ロココ

や、やった……

 前方に手を奮ったロココだった。

ユフィ

ロココ……

ジュピター

おいおいカッコ良すぎるぞ。

アデル

あんなに早く……
信じられません……。

ダナン

激強じゃねーか。
スゲーよ、ロココ。

 事態を把握していないのはハルだけだった。そう……ロココが刻弾を使ったのだ。しかも、具現化の早さ、刻弾の速さはあっという間で、初めて実戦で使用したとは思えない程だった。


 ユフィ達がロココに駆け寄り、褒めちぎり喜び合う。ロココは恥じらいながらも、しっかりとした口調で声を発した。

ロココ

ハルさんが
勇気を示してくれたからです。
恐怖で縮こまっていた僕に
勇気をくれました。

アリス

あそこで一人で
づっこけてる奴か?

ロココ

そうです。
づっこけてるハルさんです。

コフィン

恐れた時こそ、
その人間の真価が問われる――。
私はしっかり見届けましたよ。

 コフィンの言葉はロココの胸に届いた。それから疲労感と達成感、そして安堵感にまみれて、誰の目も気にすることなくロココは泣きじゃくった。

 ~航章~     78、道標

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