Wild Worldシリーズ
Wild Worldシリーズ
セアト暦40年
英雄の輝石
14.城下町へ
鉱山の町エメラルドから城下町まで、普通に歩いて10日の距離がある。
道のない道。
広大な大地を、轍の跡に沿って進む。
ラムダも最初の頃よりはずっと旅に慣れて、足腰がしっかりとしてきた。
行く手を阻む土の山などを越えるときは、フラウの手を取ってあげたりした。
エメラルドから遠ざかるにつれ、荒れた荒野に緑が増えてくる。
そのまま北西に向かい、しばらくはビューイの川沿いを上った。
城下町の南西に異紡ぎの森が広がるから、地理的にその森は迂回できる。
川沿いを歩きすぎてしまうと城下町への道を見過ごしてしまうことになるが、しばらくすると舗装路になり、ご丁寧に立て札まであった。
しかし、ここまですでに5日かかっている。
なぜか元気なケルトを横目に、ラムダとフラウは少し休憩を入れることにした。
あと半分か
そうね
それにしても、ケルトは元気ね……
疲れた声で吐き出すフラウに、ケルトが反応した。
君たちのほうが若いんだから、もっとしっかりしなきゃダメだよー
その声に、疲れが倍増した気がした。
でもフラウ、ちょっと顔色が悪いよ
大丈夫?
ケルトがフラウの顔を覗き込む。心配そうなケルトに、フラウは少し驚いた。
そうかしら
うん。歩くの辛いなら、おぶってあげようか?
結構よ!
ケルトの親切な申し出に、大きなお世話とフラウはムッとして立ち上がった。
ケルトに他意はないのだが、女性に対して少しデリカシーがなさすぎた。
さぁ、いくわよ!
ラムダも立って!
フラウに急かされて、ラムダは何とか重い腰を上げた。
なぁ
何?
あのさ……
だから何よ
あと少し。
あと少しで城下町。
遠くに城壁が見える。
それを越えれば、待ちに待った城下町。
フラウは頭から布を被り、顔のほとんどを隠していた。
その様に、ラムダが訝しむ。
ひとつの町に辿り着くことは、新しい出会いがあることで、それはとても楽しいことだと思うのに。
どうしてこんな変装まがいのことをするのだろう。
それ、取ったら?
頭の布を指してラムダが言う。
寒いのよ
フラウがぶっきらぼうに言った。
絶対嘘だ
それ以上追求できなくて、ラムダは肩をすくめた。
フラウより、あっちのほうが変装しなくていいのかよ
どうやら一度掴まったらしいケルトは、ラムダたちの前を楽しそうに跳ねながら歩いていた。
ケルトには危機感というものがないのだろうか。
少しおかしいこの2人。
レダがいるという城下町を前に、期待と不安をいつも以上に感じていた。