戦いが進むに従って個々の実力差が
明確に出るようになっていた。
事前の情報にあったように
敵は低位のアンデッドや
モンスターが中心でそんなに強くはない。
もちろん、
あの数が厄介なことには違いないけどね。
対して僕たちの側は
熟練した傭兵さんたちが中心だから
どんどん敵を駆逐していく。
戦いが進むに従って個々の実力差が
明確に出るようになっていた。
事前の情報にあったように
敵は低位のアンデッドや
モンスターが中心でそんなに強くはない。
もちろん、
あの数が厄介なことには違いないけどね。
対して僕たちの側は
熟練した傭兵さんたちが中心だから
どんどん敵を駆逐していく。
良い感じですね。
敵は数こそ多いですが
個々の能力はそれほど
高くないようです。
あぁ、この調子なら
余裕で殲滅させられるぜ。
油断は大敵だよ。
その通り。
勝負は終わってみるまで
分からん。
その時、不意に艦橋のドアが開いた。
中に入ってきたのはアーシャさん。
戦いをしてきたあとなのか、
その手には血のついた大剣がある。
表情はいつものようにポーカーフェイスで
何を考えているのかは掴めない。
でも外で戦いはまだ続いているんだし、
どうしたのかな?
…………。
アーシャか。
どうしたんですか、
アーシャさん?
…………。
待てっ、トーヤくん!
様子がおかしいっ!
マイルさんは
アーシャさんに近寄ろうとした僕を制した。
するとアーシャさんは大剣を握り直し、
じっとマイルさんを見つめる。
ただ、相変わらず無表情のままだけど。
…………。
てめぇ、
何を考えてやがるっ?
……皆さんを
倒しに来ました。
っ!?
裏切るってのか?
魔族社会において裏切りは
当たり前のようにあると
学びました。
驚くことではないでしょう。
それに私はもともと
あちら側の所属です。
間者として送り込まれて
いたのですから。
そんな……っ……。
下がれ、トーヤ!
兄ちゃんには
手出しさせないっ!
アポロとエルムが咄嗟に身構え、
僕を庇うように前へと身を乗り出した。
一方、それに対してアーシャさんは
視線だけを動かし、
ふたりの方をチラリと見る。
もちろんその程度じゃ
思考までは読めないけど……。
はっはっは。
見事な間者っぷりだ。
私もすっかり騙された。
感心したよ、アーシャ。
だが、私を倒せるか?
マイルさんはポケットに手を突っ込むと、
何かを握って拳を取り出した。
そしてブツブツと何かを呟くと
その手には美しい彫刻が施された
手槍が現れる。
宝石のようなものも付いているし、
芸術品としての価値もありそうだ。
せいやぁっ!
マイルさんは瞬時に間合いを詰め、
アーシャさんに切っ先を突き出した。
その手数とスピードは目で追えないほど。
でもアーシャさんはその全ての攻撃を
あの大剣で全て受け止めている。
信じられないのは、
その一撃一撃を確実に対応していること。
まるで大剣に重さなんてないかのように
俊敏かつ自在に操っている。
やがてマイルさんが
後方に飛び退いて間を置き、対峙する。
…………。
…………。
ふ、ふたりとも
すごい……。
マイルさんがこんなにも
接近戦に強いとは……。
ユリア以上かもしれねぇ。
驚いたぜ……。
……マイルさん、
お見事な腕前です。
これでも全力は
出せていないのだがね。
手槍はサブウエポンだから
扱い慣れていなくてね。
もっと広い場所なら
私の最も使い慣れた武器で
戦ってあげられるのだが。
本当に残念だよ。
では、
戦う場所を変えますか?
やめておくよ。
私にとってはここの方が
都合がいいからね。
この狭い場所で
キミの大剣は
扱いづらかろう。
動きに鈍さがあるのを
感じ取ったよ。
……否定はしません。
つまり現状では
武器を自在に使える
私が有利だということだ。
すぐにキミにトドメを
刺してあげるよ。
では、状況を変えて
しまいましょう。
っ!?
それはどういう――
……オォ……
オオオオォ……。
風もないのに、
アーシャさんの髪や服がなびきだした。
それとともに大剣の刀身も
徐々に黄金色に輝き出す。
――いったい何が起きているんだッ!?
はぁああああぁーっ!
くっ! マズイ!
あれはエネルギーの塊だ!
やぁああぁっ!
次の瞬間、目の前は眩い光に包まれた。
つまりアーシャさんは
大剣に溜めたエネルギーを
一気に解き放ったんだろう。
周囲が轟音に包まれ、
そこに何かが破壊する音が混じる。
煙や埃の臭いも充満して息苦しい。
程なく光が収まり、
目の前には無残にも破壊された
艦橋の姿が広がっていた。
残っているのはフロアの床だけ。
今の攻撃のすさまじさがよく分かる。
……でもそれなら僕はなぜ助かったんだ?
あれ?
ちっくしょ。
あんにゃろ、
無茶しやがって……。
けほ……けほ……。
よく見ると
隣にはアポロとエルムの姿があった。
そして僕たち三人を包み込むように
透明の光の壁がある。
――これは結界魔法だ。
そうか、そのおかげで助かったのか。
その壁は役目を果たして
力尽きたかのように
スッと目の前から消えていく。
やむを得ずに
魔法を使っちまった。
これでしばらくは
別の魔法が使えねぇ。
結界魔法はアポロが
使ったんだね?
まぁな。
咄嗟のことだったが
間に合って良かったぜ。
ありがとう、アポロ!
でもまた
攻撃をされたら……。
安心しろ。
その時は俺自身が
トーヤの肉壁に
なってやるからよ。
この命に代えて
トーヤは俺が守る。
僕がいることも
忘れないでください。
兄ちゃんは
守ってみせます。
ふたりとも……。
それよりもマイルさんは
大丈夫なのか?
――そうだ、それが気になる。
僕たちはさっきまで
マイルさんのいた方向へ視線を向けた。
当然、アーシャさんはその場に佇んでいる。
そしてマイルさんは……。
次回へ続く!