ーーここはネバーランド。子どもだけが住む、とても幸せな世界でした
俺、もっと強くなったら、ピーターパンみたいになるんだ!妖精と一緒にネバーランドを巡って、悪い奴らを浄化するんだ!
そっか………うん。アノニムなら出来るかもね
迷子の中でも、俺がいちばん強いんだぜ!ピーターパンも知ってるだろう?もしそうなったら、ピーターパンは何もせず、ゆっくり休んでていいからな!!
頼もしいね。それじゃ、もし僕に何かあったら…ネバーランドを頼んでもいいかな、アノニム?
んっ、任せとけ!!うんと楽させてやるからな!!
アノニムは優しいな…はは、楽しみにしてるよ。君が、ピーターパンとして活躍することをーー
やぁっ!!
ギャアアアアアッ
……ふぅ…浄化完了っと
アーノーニームー!!
あ、ベル!遅かったなー
違うよ!アノニムが早過ぎるんだ!!僕だって仕掛けたかったのに!!
もう終わっちゃったもーん…帰ろうぜ、ベル!リングが待ってる!!
ああ、ちょっと!!…全く…ピーターパンになっても何も変わらないなぁ、アノニムは…待ってよー!!
ーーここはネバーランド。子どもだけが住む、とても幸せな世界でした
ただいまリングー!!お腹減ったー!!
ねえさーん、帰ったよー
二人とも、お帰りなさい!丁度クルミのシチューが出来たところよ
クルミのチュー!?やったぁ!!俺手伝う!何すればいい?
そうねぇ…
しかし、ネバーランドにはある問題がありました。それはーー
二人を呼んできてちょうだい
病気にかからないように、叱らずにね!
何をしても治らない不知の病『ネバーエンド症候群』の流行です
分かってるよ!じゃ、行ってくる!……あっ、俺の大盛りね!!
はーい、分かったわ!ベル、テーブルクロスを敷いてきてちょうだい
はーい
ネバーエンド症候群…それは、原因不明の病。分かっていることは、何かしら辛い状態に陥った子どもが発症する病だということ…進行すると、『大人』と呼ばれる怪物になってしまうこと…ただそれだけ
ツイン、カーレ!ご飯ができたよー!
少しでも子どもたちを守るため、喧嘩はしても、互いを叱らないこと。それは、少し前に決まったネバーランドの掟でした
げっ、アノニム…こんな時に…!
ふええぇぇぇ
掟が出来て以来、ネバーエンド症候群にかかる住人は激減していました。しかし、近頃それがまた増えてきているのでした
どうしたのカーレ?
ツインが…ツインがあぁぁ…!!
お、俺のせいじゃないぞ!!だって、まさかあんなに高く上がっちゃうと思ってなかったんだ!!
高く…?
そんな病気を浄化できるただ一人の存在…それが、ピーターパンでした
私の、お人形さん…ひっく…ツインが、投げてぇ…それ、で……うえぇぇぇん
なるほど…それで木に引っかかっちゃったんだ……ツイン
う………俺のせいじゃ、無いもん…
……ちょっと待ってて
ピーターパンは、ネバーランドに住む子どもたちのリーダーです。ただ一人、病気にかかった子どもを救うことが出来る彼は、子どもたちの憧れの的でした
はい、カーレ。もう泣かないで
ひぐっ…ありがと…ぐすっ…
…………
…ほら、行こう、二人とも。美味しいクルミのシチューが待ってるぞ~!
クルミのシチュー!?
クルミのシチュー!?
わぁ…!私、クルミのシチュー大好き!!
うんうん。リングが作るクルミのシチューは、世界一美味しいからね~…でも…
でも?
病気を浄化するピーターパンは、当然ネバーエンド症候群にはかかりません。ただーー
喧嘩をしている子になんて、リングは食べて欲しくないだろうな~
…………
…………
考えてみれば当然な、いえ、考えなくてもわかる当然のこと…それに…
……ごめん、カーレ…
……ううん、大丈夫。アノニムが取ってくれたもの。ねえ、帰りましょう!
…うん!
…よし、二人とも掴まって!お家までひとっ飛びだ!!
ーー彼自身が、気づいてしまうまでは
ふぅ…美味しかった~!クルミのシチュー最高~!!
アノニムは、本当に姉さんのシチューが好きだねぇ
うん、大好きだよ!凄く美味しいんだもん!!
たしかに美味しいけどねぇ…よく食べられたね?
ベル、シチュー嫌いだっけ?
違うよ!……ほら、浄化した直後だったでしょ?……スライを……
うん。怖いよなー、二ブス、トルズと続いて、次はスライ…俺、なにかしちゃったかな…
アノニムは何もしてないよ。叱ってないだろう?
掟が出来てから叱ってはいないよ。あーあ、早く戻ってこないかなぁ
浄化するためとはいえ、仲のいい友達を刺すなんて…ああ怖い、僕だったら発狂しちゃうよ
うーん…確かに、最初は抵抗あったけど…でも、治すにはこれしかないんだから、仕方ないじゃん?
そうよ。ベルは考えすぎ!
姉さん…
やっほーリング!ツインとカーレはもう寝た?
ええ。ぐっすりよ
…姉さんは怖いと思わないの?こんなの、ピーターパンにしか耐えられないって
私は怖くないわ!浄化のナイフで魂を鎮めれば、ネバーランドの清らかな空気が病気を浄化してくれる…何も怖いことなんてないじゃない
まあそうなんだけどさぁ…僕は、人に刃物を向けるって考えただけで……ああ怖い!!
あはは!ベルは怖がりだなぁ
ほっといてよ!
…僕らももう寝よう。ほら、月があんなに高く上がってる
あら本当!そろそろ寝なくちゃ…それじゃ、おやすみなさい、アノニム!
おやすみ、アノニム!
うん!おやすみ、ティンク!!
ふあぁ……不思議だなぁ、さっきまで全然眠くなかったのに…早く寝よう…
……アノニム
あれ?ツイン?もう寝たんじゃなかったのか?
えっと…眠れなくて…
……怖い夢でも見たのかい?
違うんだ…その……スライのこと…
……ああ、ツインは特別スライと仲が良かったよね…大丈夫。しっかり浄化したから、じきに戻ってくるよ
……二ブスや、トルズも…?
もちろん
嘘じゃない?
もちろん!ピーターパンは嘘をつかないよ!!
……えへへ、そっか…
うん。だから、安心しておやすみ、ツイン
うん…おやすみなさい、アノニム
…………ネバーエンド症候群……
……ピーターパン…こんな時に、どこに行っちゃったんだ…?
今日も平和なネバーラーンふんふふふふーん
なんかご機嫌だね。どうしたの?
うーん、なんだろう。今日はいいことが起きる気がするんだー!
そうなの?それは良かったね~
そういうベルはいつも通りだね!
そうだね~、僕は何にも考えてないからねぇ。全部全部、とっても優秀なピーターパンが何とかしてくれますしー?
あ、あれ…もしかして昨日のこと根に持って…
しーらない!……ん?なんだあれ
うん?どれ?
ほらあれ…あんな所にテントなんてあったっけ?
うーん………なかった、ような…あったような…?
ちょっと気になるな…見に行ってみよう
そうだな
…見たところただのテント……だね…
待って、話し声が聞こえる…誰かいるのかもーー
うわっ!?
!あれは…ツイン!?待って!!
ちょ、アノニム!!
待って!!待てってば!!……ツイン!!
うわっ!!
ツイン!!どうしたんだよ、そんなに慌てて…
放せ…放せ!!人殺し!!
えっ…?
全部…全部聞いたぞ…今まで、お前が…ピーターパンがやってきたこと…!!
ツイン?何のことだ…?俺は人殺しなんて……
お前が浄化だと言っていたあの行為…あんなの、浄化でもなんでもない…!!
浄化…?ツイン、悪い冗談はよしてくれ…浄化と人殺しは全然違うじゃないか!
同じだ…だって、浄化を終えたら戻ってくるなんて…それが嘘だったんだ…!!それが…だって、俺たちは……一度、死んだら…う、うう……
ツイン…?ツイン、どうしたんだ!?
………っ!そんな…どうして…!?
あ……うう……くる、し……あ、あああ……
ネバーエンド…症候群…!?
あ…ああ…あは…あははは…そうか…そういう事だったんだ…!はは…あははは…あはははは!!!
ツイン…
どうした…殺すんだろう…?スライと、同じように…俺も…早く……早く…殺せよ!!!!
っ!!
あ……ああ……人、殺し…
はっ…はっ……あ…
なん、だったんだ…今の…本当に、本当に、ツインだったのか…?だって、ツインはあんなこと、絶対に…!
人殺し
違う!!…俺は……俺は……!!
そうだ…あのテント…あそこから出てきて、変に………ベルは…?………まさか……
ベルっ!!!
う……アノ、ニム……
ベル!!何があったんだ!?何をされた!?
アノニム…かえ、ろ…じゃなきゃ、君も……
…テントの中にいるやつにやられたのか…!?クソっ…待っててベル、俺がーー
ダメだ…君は、そこに入っちゃ…!
大丈夫、俺はピーターパンなんだ…ちょっとやそっとじゃ、やられないよ
っ……違う…!そうじゃ、なく、て……ア、ノニ……
ベル…?ベル!!…………一度、帰ろう…ベルの手当を優先しなきゃ…!!
………ベル……
アノニム
リング…!ベルは…?
聖水を飲ませたら落ち着いたわ。今は眠ってる
そっか…良かった…
ねえ、何があったの?教えてちょうだい
それがーー
そんな事が……
ツインは、あのテントから出てきてから変になった…ベルも、俺がちょっと離れた隙に…絶対あのテントには何かがあるんだ!調べに行かなきゃ!!
でも、ベルはテントに入っちゃいけないって…
それでも…!!俺は、ピーターパンなんだ…みんなを守らなきゃ…あそこに、危険な化け物がいるなら尚更、俺が調べに行かなきゃ…!!
……あなた一人じゃ無茶だわ
大丈夫だよ!ティンクは心配性だなぁ…心配すべきなのは、俺よりネバーランド自体の方じゃないのか?だってそうじゃなきゃーー
あなたにもし何かあったら、誰がネバーランドを守るの!?
!!
っ…ごめんなさい、怒鳴るつもりはなかったの。でも…今のアノニム、ちょっと変よ…少し落ち着いた方がいいわ
………わかった…
……さっ、私はおやつの準備をしなきゃ!アノニム、カーレを探してきてちょうだい。きっと近くで遊んでるはずだから
………リング
なあに?
カーレには、なんて説明すればいい?ツインのこと……
いつも通り、浄化したって伝えればいいじゃない
………
…もしかして、気にしてるの?ツインに言われたこと…
……もし、本当にそうだったら…
そんな訳ないわ。あなたは正義のヒーロー『ピーターパン』なんだから!自信もって!ね!!
…………うん。そうだね。俺は…ピーターパンなんだ…
その意気その意気!今日のおやつはクッキーよ!うんと美味しく作ったから、楽しみにしててね!
……うん。楽しみにしてるよ……行ってくる
行ってらっしゃい!
……カーレ。ここにいたんだね
あっ、アノニム!お迎えに来たってことは、おやつの時間?
うん。もうすぐね…でも、その前に、伝えなきゃいけないことがあるんだ…
んぅ?なあに?
……………ツインがーー
あっ!そうだ、ツイン!!聞いてアノニム!!
ごめん、後でいいかな?とっても大事な話なんだ…
インディアンの集落から少し外れたところにね、新しいテントが張ってあるのよ!
!!
あのね、それでね………あっ……
それで……なに?
うーん…これ、アノニムには言っちゃダメなんだった…ごめんね、アノニーー
教えて!!
ひっ!?
あのテントに何があるか知ってるの!?だったら教えて!!お願い!!
えっ……う……で、でも、アノニムには、言っちゃダメって…
どうして!!
わ、わかんな…ひぐっ…わかんないよぉ…私、頭良くないからぁ…ふえぇぇ…うえぇぇぇん
っ……ご、ごめん…泣かせるつもりは無かったんだ…ごめんね…
うわあぁぁぁん
っ……泣きたいのはこっちなのに…!!
カーレ、分かったよ。言わなくていい…ただ、誰が、言っちゃダメだって言ってたの?それだけ教えて…
ひっく……ぐすっ…うん…スライ、が……
スライ…?
二ブスを、アノニムが浄化する…ちょっと前…テントのことは、インディアンから聞いたんだって…それで、二ブスとスライが、あのテント、見に行って……二ブスは、その…次の日に……
どうして…教えてくれなかったんだ…
……ねえ、アノニム…もしかして、病気になるのは……
……うん。俺もそうだって考えてる……
そんな…!じゃあ、ツインが危ないわ…!!さっき、あのテントに探検に行くって…!!
ツインは……もう…
そんな……でも…ちゃんと、浄化してくれたんだよね…?だったら、すぐ戻ってくるよね…?
…………うん。きっと
そっかぁ…それなら良かった……
………やっぱり行かなきゃ…
アノニム?
カーレ、先に家に戻っててくれないか?
アノニムは?
ちょっと用事を思い出したんだ……そう。インディアンたちに、干し肉を分けてもらわなきゃいけなかったんだ。ティンクには、また冒険に行っちゃったとでも言っておいてよ
どうして?嘘はいけないんだよ?
こんな大事なこと忘れてたなんて…特にリングに知られでもしたら、怒られちゃうじゃないか
……うぅ…リング、怒ると怖いもんね…
それじゃ、頼むよ。カーレ
うん!行ってらっしゃい!!
………うん
今日のおやつはなんだろうな~……あれ?そう言えば、干し肉って…
…この前、ツインと私で貰ってきたばっかりじゃなかったっけ…………大変!伝えに行かなきゃ!!
この中に…ネバーエンド症候群の原因が………よし…!
………誰もいない…?留守なのか…
いっ…げほっ、ごほっ……!散らかってるなぁ…しかも埃っぽい…もう随分前からあるみたいだ…とにかく明かりをつけなきゃ……こんな時、ベルがいれば……あった、ランタン…!火打石もあるし、これで……
うわ…なにこれ……本がこんなに沢山…
?この音……この下、もしかして……
穴だ…!ロープもたらしてある……行ってみよう!!
うわぁ…!!入江だ…!!こんな所、初めて出た…あの大岩、なんだか骸骨みたいだ…ふふっ、面白い!!
……って、違う違う…そんなことしに来たんじゃないんだ…!!それにしても霧が深いな…地平線が見えないなんて……ん?あれは……船…?
随分古い船だなぁ…幽霊船みたい…もしかして、ここに化け物がーー
化け物なんて、心外だなぁ
っ…!誰だ!?
………え……?
…………なんで……?
私の船へようこそ、アノニム…
なんで、ここにいるの……?
いや……ここでは、こう呼ぶべきかな?
ピーターパン……?
ピーターパン
何を言っているんだい?今のピーターパンは君だろう?
どうして?なんで…?まさか…そんな……嘘だ!だって…だって、ピーターパンは…そんな事しない…!そんな、こと…!!
………夢を台無しにしてしまったね。でも、それが大人の役目なんだよ
おとな…?何言ってんだよ…?それじゃまるで、ピーターパンが大人になっちゃったみたいじゃないか…!!
……その通りだよ。ごめんね、アノニム…私は、大人になってしまった…ネバーエンド症候群に、抗えなかったんだ
どういうこと…?大人って…もっとドロドロしてて、真っ黒で、汚いものじゃ無かったの…?ピーターパンは…そのままじゃないか…この前より、ちょっと……背が高くなっただけじゃないか…!!
………ねえ、ピーターパン。話をしようか
嘘だよね…?なんで何も言わないの…?ねえ、ピーターパン…!!
はじめまして、私は…ギルト。ギルト=フックだ。ピーターパンの敵は、総じてフックだと決まっているからね
そうだ…ピーターパン、君もここに調査に来たんだ…それで、たまたま俺と鉢合っただけ…なあ、そうだよな…?そうだって言ってくれよ…!!
この船の先にはね、ネバーランドの外の世界が広がっているんだよ。そこは、汚くて、愚かしい大人の世界だ
ピーターパン!!無視すんなよ!!…答えてくれ…!!
私はね、そこでたくさんの大人を見た…弱い者に力を振るう者…強者に歯向かい、のめされる者…うわ言で信頼を集め、力を得る者…いろんな人がいたよ
ピーターパン!!
でもね。どの大人も、大人であることに誇りを持っていることに気づいた…これは、ネバーエンド症候群で大人になった者とは違う傾向だった
ピーターパン…頼むよ…
この世界は…ネバーランドは、子どもの認識や意思が強く影響される…大人に捨てられ、ここにやって来た子どもたちにとって、大人とは醜い化け物なのだろう…
……………
でもね、ピーターパン…子どもはいずれ大人になる…それは、変えられない現実だ。君も見てきただろう?
………病気は…ネバーエンド症候群は…避けられないって、こと…?
そうだ
じゃあ…俺が今までやってきたことは…?みんなを浄化して、元に戻していたんじゃないの…?
残念ながら…違う。だってね、ピーターパンーー
いや…やめろ…聞きたくない…やめろっ!!
ーー人は、一度死んだら蘇ることはないんだよ
やめろおおおおおおおお!!!!
はぁっ…はぁ……はぁっ……!!
………アノニム…アノニマス…。君はもうすべてを知った…君も……もうすぐ……
ーー俺は……
アノニム!どこいってたの?インディアンの集落行ったら、アノニムは来てないっていうし……アノニム?
……………
どうしたの…?大丈夫…?
……カーレ…俺……
…………
っ……
大丈夫、大丈夫…いいこ、いいこ…
…はは…なにそれ…
いつも、ピーターパンがやってくれたのよ。私、迷子の中で一番泣き虫で気が弱いでしょ…?だからね、私しか知らない、魔法の言葉なの
……うん…そっか……うん……
帰ろう、アノニム。ティンクが待ってるわ
……うん…帰ろう、俺たちの家にーー
ただいまー!
……リング?いないの?……おかしいなぁ…
帰り、遅いから探しに行っちゃったのかも…どうしよう…
すれ違いになるといけない。此処で待ってよう……あっ、クッキーが出来てるよ。先に準備しちゃおうか
うん!!
えっと…あれ?ハチミツが切れちゃってる…カーレ、サロンにまだあったはずだから、取ってきてくれないかな?
はーい!
……カーレも、いつか…大人になっちゃうのかな……
……もし、そうなら…それまでの間だけでも、彼女に、夢をーー
カーレ!?
カーレ!どうした…
の…
ひっ……う……アノニム…ぅ…ひっく…ベルが…ベルがぁ…!!
っ…!?カーレ…ここはサロンじゃないだろう…!どうして…
ドア…開いてた、から…!………それより…どうして…?なんで、なんで、ベルが…妖精が…!
カーレ…聞くんだカーレ。これは悪い間違いでーー
間違いなわけないわ!!だって、ずっと近くで見ていたもの…!病気にかかった子…ちゃんと…!!妖精は…ネバーエンド症候群には、かからないんじゃなかったの!?
っ……!
なんで…なんでよぉ…!ひぐっ…怖いよぉ…!!
カーレ…落ち着いて。大丈夫、妖精は強い生き物だから…だから、大丈夫…
怖い……こわい…!!みんな、気をつけてた、のに…!私も、いつか…こうなっちゃうの…?そんなの…そんなの、いや…!!
カーレ…?
アノニム……お願い……私を、今すぐ浄化して…
っ…!何言ってるんだカーレ!!そんなこと…!
浄化したら、みんなの所、行けるでしょう…?病気にも、かからないでしょう…?ねえ、そうでしょう…?
そ、それは…
お願い…!怖いよ…助けて………ピーターパン…!!
っ……ぅ……
どうした…殺すんだろう…?
スライと、同じように…
俺も…早く……
早く…殺せよ!!!!
人は、一度死んだら
蘇ることはないんだよ
そんな訳ないわ。
あなたは正義のヒーロー
『ピーターパン』
なんだから!
自信もって!ね!!
…………そうだ…『私』は……
あっ…ぐ……アノ、ニム……待ってて、ねーー
………………はは…あははは…あははっ…ははははっ…あははははははっ…はははははっ…!!
ーーこうして、ピーターパン アノニムは、立派な大人になりましたとさ……めでたし、めでたーー
船長、入りますよ
……また寝落ちしてる…船長、起きてください、船長!
………ん……ああ、スミー…もう朝か
もう朝か、じゃないですよ船長…次のピーターパンについて調べるのはいいですが、ご自分のお体についても、もう少し考えてください
ああ。分かっている…それよりスミー、お前が来たということは、朝食の準備が出来ているのだろう?
はぁ…全くあなたって人は…今日の朝食は、根菜のポタージュとロールパンです。紅茶とコーヒー、どちらになさいますか?
紅茶を頼む。桃があれば、それも一緒に煮たしてくれ
承知いたしました…ところで、船長。次のピーターパンですが…もう決まったのですか?
ああ…ティンクも、お前で学習したのだろう。次のやつは、お前にそっくりだ
……絶望の対象は、大人ではない…
ああ…楽しみだよ。今度はどんな風に潰れていくのか…それとも、潰れる前に私に就くのか…
…………
案ずるなスミー。私の右腕は、お前以外に務まらん…お茶の淹れ方も素晴らしいしな
そんな…もったいなきお言葉です…
……さて、きょうも美味い紅茶を頼むぞ、スミー
ええ、もちろん…我らが船長……アノニム・フック