恐怖が身体を支配する前に、指示を放つユフィ。

　その指示に反応して動くハル達前衛の三人。ジュピターとダナンが右手から、ハルとユフィが左手から一気に囲む。このフォーメーションは強敵を一気に攻める為のものだ。

　ユフィの鞭が一番早く、躱されるもその瞬間を狙う。

　ジュピターの鋭い剣撃。が、これも躱される。連撃、金属音が響き渡り次々と受けられる。ハルの左側からの斬撃も躱され弾かれ受け流された。

　ダナンの鉄棍が横方向に空を切る。続けざまに振り下ろされた鉄棍は地面にひびをいれるだけだった。

　バイスの剣が翻った時、ダナンの肩口から大量の血が舞った。袈裟切りにされたダナンは、致命傷に近い傷だ。その剣を引く動作に続き、全体重を柄に乗せた打撃。こめかみに叩き込まれたジュピターが、壁まで吹っ飛ばされたのだ。



　あれほど強かったジュピターが一瞬で。しかも四人同時攻撃した結果がこれだった。

　ユフィの鞭がバイスの足首あたりに巻き付く。一瞬、動きを制限されたバイス。だが、その切れ味の鋭そうな長剣で鞭を切り捨てられてしまった。


　続いてハルが対峙するが、バイスは悠然とした構えのまま攻めてこない。何もしてこない強敵には、言いしれない恐怖を感じてしまう。四人がかりでも歯が立たなかった相手は、ハルを品定めするようでいて楽しんでいるようにも見えた。

　ロココは刻弾を具現化しようと集中している。だが、バイスのプレッシャーに上手くいかない。

　剣で押し込まれたハル。そのままジュピターと同じく柄による強打を頭部に受けて床に叩きつけられた。

　表情の読み取れないバイスが身体を向けた先には、刻弾が具現化されていた。