――チナ村内、レジーナ軍野営地。

ガンツ

村長の振舞いだ、
遠慮なく食ってくれ。
ここのハムは絶品だぞ。

兵士達にガンツが声を掛ける。



元からの自分の兵とレジーナの兵士、

それに元斥候兵だった者を

分け隔てたりはしていない。

レジーナ

ガンツ、
少し散策に付き合わぬか?

ガンツ

レジーナ姫。
よし、お前達くれぐれも
遠慮なんかするんじゃないぞ。

ガンツを囲み食事をしていた兵士達が

レジーナに気付き背中を伸ばす。



月を背にしていたレジーナの表情は

影を帯びている。

だが食を楽しむ兵士達にも

その軟らかくも温かい笑みが感じ取れた。

レジーナ

お前がいてくれて
本当に助かっている。
礼を言う。

ガンツ

俺と村長が
知り合いじゃなくても
貴女なら歓待されてましたよ。

レジーナ

そうではない。
いや無論それもあるが、
お前もその部下も
実に勇猛でよく働く。

ガンツ

俺はまだ
何も成し得てませんが、
アイツらは骨のあるもん
ばっかりですよ。

レジーナ

傷付いた者達の見張りや
馬の世話を、自ら率先して
交替している。
今日合流した者同士で
なかなか出来る事ではない。

レジーナの視界の先には、

馬の世話をする兵士達がいる。



誰一人疲れた顔を見せる者は居らず

餌の世話やブラッシングを

丁寧に行っている。



馬にもその気持ちが伝わるのだろう、

世話をする兵士にとても懐いている。

レジーナ

お陰で治療も行き届き
ゆっくりと傷を癒すよう
眠れているようだ。

ガンツ

ギュダ殿が上手く
纏め上げてくれて
いるからですよ。
俺は何もしてません。

レジーナ

なんだ?
小競り合いをしているようで
認めておるのか?

レジーナの言葉と共に

ギュダが部下達に囲まれている姿が目に映る。



部下達は自分の武器やギュダの槍を

丁寧に手入れしている。

戦場において武具は、

命を守る重要な要素の一つ。

この兵士達はそれを充分理解していた。

ガンツ

もちろんです。
そのギュダ殿が、
どうやらあちらの方で大変
慕われているようです。

ガンツが目で笑ったのは、

ジャグラスの兵士があらわれ

ギュダが纏わりつかれ始めたからだ。



マリンバで騒がしくされながら

何かジャグラスがどうのと

粘り付くような歌詞で

歌われ続けている。



堪えきれぬギュダは

何かを掲げて説明してから遠くへ投げた。



マリンバの兵士は

それを取りに楽し気に駆けていった。

レジーナ

はっはっは、
楽し気な部下が増えて
良かったではないか。

ガンツ

羨ましい限りです。

顔を上げ実に楽し気に笑うレジーナ。

その横を堂々と歩くガンツ。



夜風は少し肌寒く感じる。

空の星はチカチカと瞬いている。



その満点の星の下で同胞と騒ぐ兵士の声。

特産のハムを焼いた香りは

鼻先から食欲を刺激してくる。



星を見上げる者の中に、

運命を語り、樽酒を掲げ

義兄弟の契りを交わしている者も居た。

レジーナ

彼等が誓い合うように
私も祖国を必ず取り戻す。

ガンツ

大国を敵に大言を吐いていると、
誰が笑おうと俺は信じますよ。
そして貴女なら成し得る事だ。

レジーナ

ギュダといいお前のような
心強い男が私にはついている。
私は人に恵まれておるからな。

ガンツ

あの男も含めてですか?

兵士が小さな輪になり

何かゴソゴソとやっている。

その中にはジャグラスも居るようで、

吹けば飛ぶような小さなカードを使い

賭け事をしているみたいだ。







「サンピソン」

「ピソメランカ」

「やるな、ではシンピソン」

「ピソメランカをポピンしないのか?」

「シソンヌのタイミングが難しいな」

「ピソをポピしてメリランカパンピソン!」

「うおー!! すげぇーーー!!

流石ジャグラス様だ!!」







まったく何を言ってるか分からないが

盛り上がってる事だけは確かだった。

レジーナ

くどいようだが
奴はギュダの部下だぞ。
私の器に収まりきらん。

ガンツ

ん!?

ガンツの目の端に

村人と話す兵士が映った。

戦闘中に見かけた少年だ。

チナ村の少年

おい、オレを
ガキ扱いすんじゃあねぇぜ。
お前には
一応助けられたから名乗るが、
ウルって名前があるんだ。

語調が強めの少年はウルと名乗った。

ウル

ほれ。
そんな汚い靴じゃあよ、
すっ転ぶぜ。やるよ。

憎まれ口を叩きながら

ウルと名乗った少年は兵士に

靴を差し出した。



しっかりと作られた靴で

使用されている皮も軽くて丈夫そうだ。

ウル

あん?
あのちっこい奴等が
何をしてたかって?
別にこの村には迷惑掛けて
なかったぞ。
むしろお前達の方が大迷惑だ。

ガンツ

騒がしてすまなかったな。
多分俺が一番暴れたはずだ。

ウルと兵士が話す後ろから

ガンツが声を掛ける。

ウルは、突然現れた身なりの良い者に

据えた目付きを変えずに言葉を返す。

ウル

お前達兵隊はいつも
そうやって見下ろして
きやがる。

レジーナ

すまぬ。
この村を巻き込んだのは
私の責任だ。
責めるなら私を責めろ。

ウル

ふん!
村を襲う賊を追い払う約束で
留めてやってるんだ。
それが終わったら
さっさと出て行けよ。

村長の悩みを聞いたガンツが、

レジーナに報告し、約束した事だ。



ウルの据えた目線は

レジーナに向けられていなかった。

レジーナ

それでは
もう一つ約束をしよう。
私と君との約束だ。

ウル

あん?
オレとお前が!?

レジーナ

明日、賊を討伐に行くが
その時に従軍してくれまいか?
それが終わった後にだが、
君の言う事を何でも
一つ聞こうではないか。
どうだ?

ウル

従軍…………。
お前の腹が全く読めねぇぞ。

ガンツ

それは俺も同じだ。

ウル

が、面白そうだ。
約束してやってもいい。

レジーナ

うむ、
よろしく頼むぞ。

ガンツにも、そしてウルにも分からない

レジーナの意図。



不可解さを残すガンツとウルを横目に、

レジーナは

快活な笑いを抑えきれなかった。

チナ村での滞在

ココ
ラビ
ステータス≪快眠≫


アスカトゥー
テオフィルス
ステータス≪満腹≫


シルヴァリア
ルーチェ
ドサーユ
『よく手入れされた武器』


ルリ
ペルペーン
グーリン
兵種〔騎兵〕


ベッチー
『アミュレット』


ズィルバー
『名職人の靴』


ズーノ・Y
ブルチズ
ステータス≪義兄弟≫

各自、
同胞と共に鋭気を養う

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