七月二十日。
終業式が終わり、体育館から教室へ戻る途中、裕哉が伸びをしながらそう言った。
あーやっと夏休みだ
七月二十日。
終業式が終わり、体育館から教室へ戻る途中、裕哉が伸びをしながらそう言った。
そういや、今日藍人誕生日だろ?
裕哉も祝ってくれるのかー
え、裕哉も、ってことは……
ああ、なるほどな
え、なんだよ?
いやいや、俺はお前を祝ってやんねーよ
はあ? ひどいやつだな
ひどくねえよ。気遣ってやってんの
?
わからねえって顔すんなよー
微妙に噛み合わない会話を交わしながら歩く。
藍人は、これで真面目なんだからなあ、タチ悪いなあ
裕哉は、理衣と藍人のことを素直に応援していた。
でも、それと同時に透子の想いに気付かない藍人に少し苛立ってもいた。
気持ちに矛盾が生じていることにも気付いていたが、でも透子の気持ちを察しなさすぎる藍人に対して、もう「鈍すぎる」という言葉だけじゃ片付かない感情も持っていた。
ま、藍人だしな
隣で意味がわからないという風に首をかしげる藍人。
苛立っても、仕方ない、よな
藍人! 帰ろう
教室へ戻るなり、理衣が藍人に声をかけてきた。
頑張れよ~
と謎のエールを裕哉からもらいつつ、席に戻る。
私、藍人に話があるんだ
え、なに?
ここじゃ駄目。あの場所に、行こう?
あの場所?
ああ、わかった、行こう
話の内容が気になるが、とりあえず学校を出て歩き出す。
藍人はあの場所に行くのは久しぶりで、わくわく……とまではいかないが、景色を眺めるのを楽しみにしながら理衣との雑談を楽しんだのだった。
第十二話へ、続く。