月曜日。
藍人はすこし寝坊して、チャイムギリギリで教室に駆け込んだ。
月曜日。
藍人はすこし寝坊して、チャイムギリギリで教室に駆け込んだ。
おはよー、藍人珍しいな
裕哉が声をかけてくる。
おはよう、なんか寝坊しちゃってさ
ははっ。ま、たまにはいいんじゃね?
そうかもね、と返事をして席に着いた。
藍人、おはよう
隣に座っていた理衣が、笑顔で声をかける。
おはよう
藍人は挨拶を返し、机に教科書などを入れていく。
担任が入ってきて、藍人の号令でホームルームが始まった。
ふぅっと息を吐いて力を抜き、外を眺める。
今日も晴れて、空は澄んだ青。
今日は連日の射すような日差しとは違って、暑さがすこし和らいでいた。
気持ちよく澄んだ青空も、夏らしい。
藍人は学校までずっと走ってきた––––といっても十分ほどだ––––が、汗をほとんどかくことはなかった。
二時限目まで終わり、少しだけ長い休み時間。
はあ、現代文嫌いだわ……
裕哉が前の席の椅子に座り、愚痴をこぼし始める。
当たるなんて思わなかったから、俺めっちゃぼーっとしてたし!
ま、裕哉らしいよな
うわ、なんだよそれー
……あ、そういや、最近秋野とはどうなのよ
は? どうって?
だって、付き合ってるんだろ?
いや、わからん
なんだよそれ。藍人、まだ恋愛感情に目覚めてないわけ?
……そういうこと、かな
秋野がかわいそうだなあ……
……友野も
え、最後なんて言った?
や、なんでもない。ま、あんな美人に好きって言われたんだから、大事にしろよ?
それには答えず、藍人はいまだにわからない「好き」という感情について考えていた。
そういえば、裕哉は好きな人とかいないのか?
いるよ。誰だと思う?
わからんな
うわ、ちょっとは考えろよなー
––––そういえば裕哉とこんな話すんの初めてかも
あ、透子とか?
なんとなく目についた透子の名前を挙げてみる。
すると、裕哉は目を白黒させ、
なぜ分かった
と大げさに驚いて見せた。
え、いやテキトーだけど。透子なのか
テキトー!?
……ま、俺には勝ち目ないから、いいんだけどさ
ん? 誰に負けんの?
……教えなーい
ま、いいけどね別に
そこで予鈴が鳴り、裕哉は席に帰って行った。
––––透子のこと好きな奴、他にもいるってことか。あいつ、モテるんだな
裕哉の真意も、透子の想いも知らない藍人は呑気にそんなことを考えていた。
第十一話へ、続く。