――冒険者区、中央通り。
――冒険者区、中央通り。
冒険者区のメインストリートである中央通りを、ハルとジュピターは歩いていた。自主練後の小腹を満たす為、訓練場から酒場に向かっている途中だ。
さぁ、メシっすよぉ。
よく食うやつだな。
ジュピターや
ジュピター爺ちゃんみたいに
強くなるためっす。
あんまりウチのジッチャンを
過大評価してたら
現物見た時ガッカリするぞ。
そうなんすか?
苦笑いで返すハルは、ゴッツ爺を思い出していた。確かにゴッツ爺も凄腕の鍛冶屋だったらしいが、寝る前いつも飲んだくれてダラダラした姿を見せていたからだ。
そして――――、まだ見ぬ両親の事も頭に過った。
酒場にはもうユフィやリュウ達は居なかった。
目についたのは、モロゾフやデメル達のテーブルだった。
おう、てめぇら
酒、注ぎにきたのか?
良い心掛けじゃねぇか。
おうハルか、こっちだ。
朝まで飲もうぜ。
やぁ、ハル。
初陣の話、聞かせてよ。
大して腹も減っていないのに、嫌な予感の走るフィールドに来てしまった……。そんな顔を見せているのはジュピターだったが、ハルはお構いなしにそのテーブルに飛び込んだ。
いやぁ~
聞いてくれるっすか。
長くなるっすよ。
おいおいおいおい、何、自ら長居する発言をするんだ!? と聞こえてきそうなジュピターの顔は歪み、引きつっている。
…………。
教官のキャロウェイだ。今はリュウのパーティの引率をモロゾフと一緒にしているベテランで、ハルとの接触はこれが初めてになる。
騒がしいデメル達と違い、物静かな雰囲気のキャロウェイ。歯に衣を着せない毒舌とは知っているが、おしゃべりではない大人の男性というイメージが強い。
おうおう、チビスケ。
久し振りじゃねぇか。
おぅ、ぃよぉ~。
そそそ、そぅ……
あの時はまだ
訓練生になる前だったもんね。
相変わらずモジャモジャだな。
おー、よしよしよしよし。
ちょ、やめろって。
オイラの髪で遊ぶなって。
ぅわー!
セットが台無しにぃっ!
セ、セットだと。
それセットしてやがったのか!?
って、ぅお!!
何だそれ!?
ジュピター、
モジャモジャが
デカくなってるっす。
身長伸びて良い感じだね。
そりゃぁ良い!
どこまでデカくなるか
ためしてやる。
ちょ、やめ、
やめてくれぇー!
はひぃ~、
やっぱりジュピターは
飽きさせない男っすね。
多分ロココくらいなら
中に隠れられるっす。
…………。
騒ぎまくるテーブルを横目に、キャロウェイは樽酒をグラスの中で遊ばせる。爆笑していたハルと目が合っても、何も言葉を発さなかった。
あ……、自分ハルっす。
リュウとは一緒に
ディープスに来た仲間っす。
…………
明日もリュウ達のこと
よろしくっす。
…………
全く反応しないキャロウェイだが、ハルはお構いなしに話し続ける。
でも自分、教官が
迷宮に入る冒険者だったとは
知らなかったっすよ。
何言ってやがる。
教官みたいな仕事ぁよぉ
片手間なんだよ。
おおおー!
それじゃあやっぱり
聞いとかなくちゃ
いけないっすよ。
自分、両親を探してるっす。
サクラって
冒険者知らないっすか?
もう17年も前の話っすけど。
前言ってた母ちゃんか。
俺達は全く知らねぇけど、
キャロウェイの兄貴は
そういや、世代は一緒だよな。
デメルの視線もキャロウェイに向き、気になる一言を投げかけた。
それを受けざるを得ないキャロウェイは、初めて口を開いた。
知らねぇぜ、
んな奴ぁよ。
その答えは、ハルが今迄聞いてきた他の冒険者達と一緒だった。