駄目だ!


振り下ろされたナイフ目がけて
晴紘は走り込んだ。


侯爵を突き飛ばし
その手から離れた体を抱える。


その晴紘の背中に








勢いづいたままのナイフが
振り下ろされた。































……と

鈍い音がした。



































































 







痛みを感じない。




致命傷だったのだろうか。

神経をやられて
痛覚すら消え失せてしまった
のかもしれない。





どうせなら……女を庇って死にたかった、な

このまま死んじまったら、灯里との仲を疑われるじゃないか……



市民を守って殉職したおまわりさん、
で済めばいいが

「三流で品が無い大衆娯楽誌」

の力を
甘く見てはいけない。




























何故……!

侯爵の声が聞こえる。








その悲痛な声に





薄目を開ける。 




















晴紘が受けるべきナイフを
背に突き立てられ

彼らを庇うように
覆い被さっていたのは











撫子だった。


【漆ノ参】歯車と、簪と・肆

facebook twitter
pagetop