駄目だ!
振り下ろされたナイフ目がけて
晴紘は走り込んだ。
侯爵を突き飛ばし
その手から離れた体を抱える。
その晴紘の背中に
勢いづいたままのナイフが
振り下ろされた。
……と
鈍い音がした。
痛みを感じない。
致命傷だったのだろうか。
神経をやられて
痛覚すら消え失せてしまった
のかもしれない。
どうせなら……女を庇って死にたかった、な
このまま死んじまったら、灯里との仲を疑われるじゃないか……
市民を守って殉職したおまわりさん、
で済めばいいが
「三流で品が無い大衆娯楽誌」
の力を
甘く見てはいけない。
何故……!
侯爵の声が聞こえる。
その悲痛な声に
薄目を開ける。