Wild Worldシリーズ

セアト暦40年
英雄の輝石

6.オカリナの製造者

 

 

  砂の町は、見たことのない不思議なもので溢れていた。

町を移るたびにそこでしかないたくさんのものを目撃する。

それがだんだん楽しみになってきた。




 砂の町にあるのはサソリを模った器、麻で編まれたワッカ、砂色の穀物、鉱石で作られた道具……

 目に付くもの、全て覚えておきたいと思う。

 情報を書き留めているとラムダのメモはすぐに埋め尽くされてしまった。

この町に旅なんかに来る奴は、みんな変わり者だよ

 機織のおばさんが言う。

 情報の幅が広く、まとまりがないのだそうだ。


 オカリナのことを聞くと、すぐに作っていたという人のことを聞けた。

 砂の町に住み着いた男性が、ひたすら量産していたらいつの間にか名産になっていたらしい。



 今はもう年老いて、オカリナを作ることはできないそうだ。

あの人も寂しい老人だから、暇があるなら話し相手になってあげてくれるかしら
きっと喜ぶと思うわ

 中心のオアシスから大分離れた場所。

 固めた泥で出来た一辺3メートルくらいの四角い箱に、扉用に切り取られた長方形、明取用に高い位置に小さな正方形も切り取られている。

 これが家だと、教えられなければ分からない。


ラムダ

世界は広いなぁ

 扉からひょっこり覗いてみると、大きなサソリの剥製が壁に吊られていた。

 他にも何と呼ぶのか分からないものがたくさん置いてある。

誰かおるのか?

 しばらく見入っていると中から声がする。

 しわがれたご老人の声。

ラムダ

あ、あの、すみません、このオカリナを作った方がここにいると聞いたので

 遠慮がちに言いながら胸元に下げたオカリナを持ち上げ中へ入る。

 そしてご老人のところへ行こうとしてみると……

バカ者!
家の中に入るときは家人の許可をとらんかい!

ラムダ

うわっ!? あ、はい、すみません!

 慌てて後ろに下がる。

 ビックリしたせいでつんのめりそうになった。

うむ。君は中に入ってもよいぞ

ラムダ

は、はぁ……

 怒鳴ったと思ったらすぐに認めてくれるご老人。

ラムダ

 よくわかんない……

 言われるがまま中に入る。

 外とは打って変わってひんやりとしていた。

 太陽が当たる場所とあたらない場所ではこうも違うものか。

 砂漠の昼夜を経験しているが、同じ昼間でもこんなに違う。

 太陽は偉大だ。



 明かり窓の対角線上に大きな箱が置いてあった。

 その中に溢れるほどのワラを敷き詰めて寝床にしているようだ。

 そこでご老人は横たわっていた。



 ご老人の顔はしわくちゃだった。

 着ているものは古びていて、動けずにずっとこうしていることが知れる。

 何かお土産でも持ってくればよかったと思った。

名は?

ラムダ

ラムダです

砂の町は何度目じゃ?

ラムダ

はじめてです

はじめて?
その胸のオカリナはどこで手に入れた?

ラムダ

あ、これは……

 ラムダは、レダとの出会いを話した。

 リバーストーンでの小さな出会い。

 小さな友情。

 一緒にいた英雄フェシス……



 ご老人は興味深そうに聞き入っている。

 ここ最近話し相手がおらず、退屈していたのだ。

レダか。懐かしいな

ラムダ

レダをご存知で?

 ラムダは驚いた。

 フラウもレダを捜している。

 レダは有名人なのだろうか。



 ご老人はレダの話を聞かせてくれた。

 どうやらラムダが気に入ったらしく、笑みを浮かべながら。










  

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