【第十九幕】
『水の化身、事情を知る者との再会』
【第十九幕】
『水の化身、事情を知る者との再会』
本当に来るんでしょうか?
マチって
そのアクアさんって方とは知り合いだったんですよね?
うん
私は覚えているけれど
電話ではどんな話をしたのですか?
とりあえずここ……
神隠し公園に来てって
大人気ですね……この公園
実際連絡をした時、水の賢者であるアクアは私の事を鮮明に覚えてはいなかった。
ただ火の賢者・ベルという名前を出した途端、声の雰囲気がガラリと変わり、急がせるようにこの公園へ誘導されたことが印象強く記憶に残っている。
まるで、私からの電話をずっと待っていたかのように……
マチ
男の人が入って来たわよ
あ!
僕らと同じ歳くらいの人ですね……
彼ですか?
うん
間違いないと思う……
私はキョロキョロと、何かを探しながら歩く男性に声をかけた。
あの!
こっちです!!!
む!?
水の賢者・アクア
惑星マルクに突如出現した『竜(ドラゴン)』を倒すために、神様が集めたメンバー、四賢人の一人
私の記憶では水を自由に生成・操作する能力を持ち、幼い頃であるが知識も豊富な少年だった。
久しぶりですね、ベルさん
うん、久しぶりだねアクアくん
……
……
どうしよう、何かとても気まずい空気が流れている。
当時もそんなに仲が良くなかった……というか、私が彼を苦手だっただけなのだけれど
あまり感動の再会ってわけでもなさそうですね
すいませんです
何しろベルさんの記憶がほとんど無くなっていますから
その記憶操作って、やっぱり神様がやったんだよね?
……
ベルさん実は……
あ、アクアくん
そういえば私こっちでは『マチ』って呼ばれてるの
むむ
マチ……さん?
うん
もう『火の賢者』の名前は捨てようかなって……
もし向こう世界に行けてもこのままマチで通していくつもりだから
なるほど分かりました
ではマチさん……
はい
自分が聞いている限りですが、今までのマチさんの経緯をまとめると
神様の宮殿に単独で突入
そこで神殿兵の約数千人を能力を使って殲滅
神様にこの惑星『地球』に追放され、静かに過ごしている……
合っていますか?
は、はい
その通りです……
すごい情報通ですね……
ただ実は、これまでの出来事はそう単純に説明が出来ることではありません
?
どういう意味ですか?
……?
僕が微かに覚えていることとして、火の賢者・ベルは……
人を傷つけられるような方ではありませんでした
……
はい!?
でもそれは本人が言っていることですが
……
マチさん
貴方が本当に自分自身の意思で神殿兵達を襲撃したのであれば、神様……
ミライ様は追放なんていうリスキーな選択を取らなかったはずです
何故なら追放したからといって、また再び神殿に現れないとは限らないじゃないですか
本当の悪なら、意地でもマルクに舞い戻って同じ事を繰り返す……
つまり……どういうことなの?
ここに兄貴がいたら
勝手に色々考察とかしてウザいんだろうな……
マルクの現状は思った以上に残酷ですよ
それでもこの先の話を聞く覚悟はありますか?
あくまでこれは自分の予測ですが
ミライ様はマチさんをこの危機から守るために追放したんだと思ってます
……
それでもこの件に関わっていくというのなら、止めはしません
そんな資格もないと思ってますし
……
私は自分の復讐心に任せて神様達を襲撃した。
それは自分の心の弱さで、明らかに犯してしまった罪だ。
アクアくんは他に理由がある風に言ってくれてはいるが、私自身がもっと強かったらきっとそんな事にはなっていなかったと思う。
惑星マルクの内情が複雑な状態にあることは話をしていて大体分かったし、神様……ミライちゃんが私のことを想って苦渋の選択をしてくれたことも理解した。
それでも私は……
それでも私は……マルクに行くよ!
……
どんな想いがマチさんを動かしているのですか?
私は、ユウキくんを
神谷ユウキくんを助けたいの!
……
ユウキ……くんですか
どんな方なんですか?
えっと……
……私の…………
ストーカーでしたね…
第十九幕 終