【第十八幕】
『弟の決意と兄の愛した女性』
【第十八幕】
『弟の決意と兄の愛した女性』
イケメン先生に呼び出されて、学校職員室前まで付いて来た。
基本的に生徒達は提出物を持ち込むか、またはお叱りをご教授いただくこと以外に、この場所に来ることは多くない。
だからこそ先生はここを選んだのだろう。
何か深刻な話なんだきっと。
コウタくん、落ち着いて話を聞いて欲しい
あ、はい
落ち着きます
じゃあまずは深呼吸して……
あの……
本当に重要な話ですか?
ごめんな
というのが自分も結構動揺しているんだ
な、何かあったんですか?
うん
実は……
先生はゆっくりと口を開いた。
そんな俺に言いにくいことなのか、唇が微かに震えている。
キミのお兄さん『神谷ユウキ』くんが突然倒れて緊急搬送された
意識不明の重体らしい
……
は!?
すぐに車出すから一緒に病院へ行こう!
いや……でも……え?
ええ?
唐突過ぎて理解が追いつかない。
何で兄貴の名前が?
しかも意識不明だって……え、なんで?
先生は病院へ向かう車の中で教えてくれた。
兄貴の事は母親からの連絡で知ったこと。
驚いたのは発見されたのが、家族で昔住んでいた自宅付近の公園だったってこと。
二人でよく遊んでいたお気に入りの場所、なんでそんなとこに……。
確か名前は『神隠し公園』だ。
名の通り、よくそこで人が行方不明になることがニュースで有名だった。
車で一時間半、病室にはすでに母親が到着していた。
ユウキ……
母さん!
あ、コウタ着いたのね
ごめんね迎えに行けなくて……
何言ってんだよ!
兄貴は!?
あ、あはは……
大丈夫、そのうち起きるわよ!
か、母さん……
失礼します、神谷さん
あ、先生!
遠いところ申し訳ありませんでした……
いえ、その……
あまり気を落とされないように……
大丈夫ですよ先生!
神谷家はみんな頑丈ですので!
それは頼もしい
私は学校の事もありますので、これにて失礼しますね
はい、帰り道はお気をつけて
明日からもまた息子がお世話になります
コウタくんにはお兄さんが良くなるまで側に居させてあげてください!
クラスへの復帰はいつからでも大丈夫ですので
そうですか
ありがとうございます……
私もまた伺います
それでは……
先生は来た道を使い学校へ、母さんは「ユウキを見てて」と言い病室を出た。
部屋を出るとき、泣いていたのが分かった。
その後も兄貴は目を覚まさずに、時間だけがどんどん経過していった。
友人や先生方、ヒロキも来てくれて花や果物をくれた。
眠り続ける兄貴に声をかけてくれる人は多かったが、それでも効果はなかった。
医者もお手上げ状態で、先の見えない入院生活が始まったのだ。
だが、数日経ったある日
兄貴……母さん……泣いてたぞ?
何か言えよ!!!
くっそ……何でこんなことに……
失礼します……
は、はい!?
神谷ユウキさんのお見舞いに伺いました
あ、ああー
兄貴の友人ですか……どうぞ
いや、私ではなくですね
?
こ……
こんにちは…………
第十八幕 終