佐々木小次郎

現在オイラの願い事が叶うのならば~♪

佐々木小次郎

キツネになりたい~♪

宮本武蔵

なんなんだ、その歌は……。

佐々木小次郎

おや、宮本姐さんいらしてたんですか、
相変わらず気配を消すのが
お上手でいらっしゃる。

宮本武蔵

人を盗っ人の様に言うでない。
で、心は変わらないのか?

佐々木小次郎

ええ、先代の大旦那様に拾って頂き、 今日まで務めさせていただきました。 しかし……。

佐々木小次郎

家族全員が召された今となっては、
オイラが生きる意味もありません。
事ここに至っては、故郷へ帰り
御狐様となって余生を過ごそうかと

宮本武蔵

ふん、あのシンブラックの変換装置
とやらか。……忌々しいことだ。

佐々木小次郎

そんなふうに言ってくださるのは、
今は姐さんやお嬢様、あとは今の旦那様くらいです。ありがとうございます。

宮本武蔵

ふ……ならばもはや止めはすまい。

佐々木小次郎

ええ。あとこれは餞別です。
オイラがいなくなった後も
このガンリュウを動かせるように。

宮本武蔵

おっとと、重いな。これは何だ!?

佐々木小次郎

こいつあ音声認識コードです。
あと緊急対処マニュアルも入ってます。
あとは整備マニュアルと……。

宮本武蔵

……わかった。もういい、
あとでしっかりと読んでおく。
餞別というより申し送りだな。

佐々木小次郎

ああ、そうですね。オイラはどうも、 語学の方はてんでダメでしたので。

宮本武蔵

……お前らしい。ならばこれは
私からの餞別だ。受け取るがいい。

佐々木小次郎

こいつは……菓子ですかい?

宮本武蔵

ああ。もっとも麗華お嬢様のデザートの残りカスを寄せ集めた零れ物だ。
嫌なら無理に食する必要はない。

佐々木小次郎

いえ、縁起物です。有難く頂きます。 もぐもぐ、かぁこいつあうめえ! 

宮本武蔵

こ、ここで食べるのか!
後でゆっくり味わってだな……!!

佐々木小次郎

生菓子は早めに喰わないと悪くなっちまいますから。うん? ほんのりカカオの味がしますね。これは世間様で耳にする、ヴァン・アレン帯とかいうやつですかい?

宮本武蔵

バレンタインな。私が作ったのだ。
残さず食べろよ。では、さらばだ。

佐々木小次郎

……もぐもぐ、ああ、食った食った。
腹ん中が甘いもんでいっぱいだあ。
さすが姐さん、よく気がつくし良い
腕していらっしゃる。……あん?
皿の上の紙っぺらに何か書いてある。
「き子女」? ……なんだこりゃ暗号か?
いや逆さにして読むのか。なになに……?

佐々木小次郎

……!!

宮本武蔵

ふん……これで気づかねば、
お前は大うつけだ、朴念仁めが。

宮本武蔵

だが、これでもう思い残すことはない。
あとは返事を待つばかりか……。

佐々木小次郎

ははっ、……なんてこった。
オイラ今まで気づかなかった。
姐さんの思いも、自分の思いも。

佐々木小次郎

くそっ、こうしちゃいられねぇ。
この気持ち、早く姐さんに伝えないと。
悪くなっちまう前に……!!

佐々木小次郎

かっ……はぁっ……!!

四天王

ふん、くだらない茶番劇だったが。
まあ、前座としては悪くない。

四天王

あの女、いい気配の消し方だったな。 少しは楽しめそうだ。くくく……。

佐々木小次郎

こいつは……なんだ。猫?
いや悪魔ってやつか?
どっから現れやがった?

佐々木小次郎

女……姐さんのことか? 女で楽しむ?
くっ……このゲス野郎を、
姐さんに近づけるわけには……!

佐々木小次郎

……近づけさせるわけには……。

佐々木小次郎

……近……は……武……蔵……。

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