無駄に豪華で広い食堂で、あたしはひとり和食をいただいていた。

知り合いは今は見えないので、気兼ねなくゆーまと今後について話し合っている。

ちなみに今あたしが好きな人については……予想通り大当たりだった。

イナバイナハ

じゃあご飯は普通に食べられるのね?

ゆーま

うん。ボクは食べなくても、
ぜんぜん平気なんだけど。

ユイガ博士やチャーリーとのエピソード、そしてあたしが死に至るまでの経緯。

そのすべてを聞かされた後も、あたしにはいまいちピンとこなかった。

目の前の少女が自分と同一人物であるなどとは。

外見や声、立場が違うと、ここまで印象とは変わるものなのだろうか。

それほどまでにこの画面の向こうの少女は、慎ましくお淑やかではかなげだった。

そんなセリフ、一度でいいから誰かに言われてみたいものだった。

最強院えるふ

ナーバちゃん♪

突然あたしの背後から優しい声がかけられた。

イナバイナハ

わわっ!? あ、えるふちゃん! こんちゃ、昨日はごめんね、ありがとう。

最強院えるふ

ううん、いいのよ。誰にだってひとりになって考えたりする時間は必要でしょ?

最強院えるふ

あ、でも昨日は私が蓮さんに一歩リード
しちゃったかも? うふふっ。

最強院えるふ。あたしのこの学校での記念すべきひとり目のお友達だ。

由緒正しい料理拳法家の家元のお嬢様で、今はいろいろ理由があって家を出奔中なんだとかなんとか。

御覧の通り見た目はどこにでもいるごく普通の女の子なのだが、聞いた話だとかなりの腕前の達人らしい。

でも、そんな家柄や肩書とは関係なくあたしと仲良くしてくれる、大切なお友達なのだ。

ちなみに料理の腕前だけではなく、歌もすごくうまい。歌手になったらいいのに、と思えるほどだ。

そのことを本人に伝えたら、悲しそうにほほ笑んだのが今でも心の中に残っている。

イナバイナハ

わあ、相変わらずすごい量。
それも勉強なの?

最強院えるふ

うんうん。おいしそうだから、つい研究がてらたくさん選んじゃった。料理家の修行っていうのは、毎日欠かさずできるものだからね。それと食後の運動も!

ゴリアテ

イナハ……。

イナバイナハ

あ……。ゴリさんまで! 昨日はごめんねその、迷惑かけちゃって!

ゴリアテ

ああ、無事だったのね、
イナハ……よかった。

イナバイナハ

ちょっ、ゴリさん!?

突然の熱い抱擁に、あたしは驚いた。

周囲の視線が集まるが、ゴリさんはそんなことにはお構いなしだった。

ゴリアテ

迷惑だなんて、そんな一言じゃ言い表せないわ。あなたがいなくなって、
わたくしが今までどんな思いだったか、あなたに想像ができて!?

ゴリアテ

いい!? あなたは死ねないの。わたくしの許可なくこの舞台から降りることは、断じて許しませんからね! よろしくて!?

ゴリアテ。……というのはあだ名で、本名は真白麗華。この大学に来てからできた、もうひとりの最初のお友達である。

彼女はこの真白大学の学長の娘で、やはり掛け値なしのお嬢様だ。

その名の通り、真っ白で麗しい華のようなご婦人だが、性格にはトゲもなくまっすぐでむしろ浮世離れした印象を持つ。

本人曰く、これといって特技の無い凡庸な人間らしいのだが、集中すると何でもそつなくこなしてしまう、すごい特技の人だった。

自分の知らないことに興味津々で、積極的に取り込もうとするのだが、どこか間の抜けたところが御茶目で見ていて楽しい。

イナバイナハ

死ぬなんて、そんな大げさな。
……あれ、珍しいねゴリさんが
ジャンクフードなんて。

ゴリアテ

ジャンクフード? わたくしはバーガーセットと聞いたのですけれど……。

最強院えるふ

どっちも合ってるのよ。ジャンクフードは公称で、バーガーセットは商標みたいなものね。

ゴリアテ

そうでしたの。ちなみにスマイルは
タダなんですって。得をしましたわ!

イナバイナハ

そうだね、あはは、おっかしい!

最強院えるふ

ほんとうにね、うふふ。

ゆーま

ふふっ。

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