三つの影が、結賀博士のいる監禁室を訪れた。

ひとりはネコ。ひとりは幼女。そしてもうひとりは長身の男性だった。

ご機嫌いかがかな、結賀博士。

ユイガ博士

よう。ワシは監禁されてるんだ。
いいわけはなかろうが?

これは失敬。拙者の失言でありましたか我らシンブラックに協力していただけるのであれば、今すぐにでもVIP待遇で自由の身にしてさしあげられるのでござるが

ユイガ博士

断る。世界を裏から牛耳ろうと考えているような輩に、誰が協力などするものか

サキガケ博士

あんた、なんか勘違いしてるみたいね。シンブラックはそんなゲスな組織じゃ ないわよ。むしろホワイトなんだから。

ユイガ博士

さっきから気になっとったが、なんじゃこのお子様は? 飴ちゃんいるか?

サキガケ博士

あら嬉しい、頂こうかしら。

ユイガ博士

耳年増じゃが、そこがまた可愛いのお。ほれ肩車してやる。嬢ちゃん、名前は?

サキガケ博士

もぐもぐ。魁維よ、素敵なおじ様。

ユイガ博士

ほほう、良い名前じゃな。さきがけゆい?さきがけ……はて、どっかで聞いた名前じゃが。――ゲッ、あのばあ様か!?
恒星間宇宙船の対消滅エンジン開発者の?

※ユイガ博士のイメージです。

なによ、人を化け物みたいに。

オオスギ教授

魁博士のお顔とお名前はあの授賞式以来その名声に相応しいくらいこの太陽系に美しくとどろいていますからね。

サキガケ博士

もぐもぐ。

ユイガ博士

そういうあんたは、確か……
多椙少彦教授か。

オオスギ教授

これはこれは。フルネームまでご存知とは。高名な結賀博士に名を知って頂けるなんて、アタシも有名になったものです

サキガケ博士

おおすぎすくなひこ。なっぴーね。

ユイガ博士

物質転移装置と物質変換理論を独自開発解明した天才じゃろ。この業界でその顔と名前を知らん方がモグリじゃわい。

オオスギ教授

……おそれいります。

サキガケ博士

手が、べたべた。

ユイガ博士

じゃが基礎理論は公表しても肝心の
装置の製造法と応用技術は秘匿し、
シンブラックにのみ提供しておるな?

オオスギ教授

アタシの装置は容易に軍事転用できて しまうものですから。用途を宇宙開発、物流、医療などに限定するためですね。

サキガケ博士

ふきふき。

ユイガ博士

ふむ。だがそこのパープルとかいう猫は諜報活動にその力を使っているようだが?ワシを捕らえたときのようにな。

……。

オオスギ教授

おやおや、そこまでお気づきでしたか。ですが目的のためには手段を選んでいられない時もありましょう。アタシらは 世事には疎いものですから、警備などは彼に一任されております。――うん?

オオスギ教授

……彼? 失礼それとも彼女でしたか?

どちらでもよろしいかと。
吾輩は猫でありますからな。

サキガケ博士

ひま。

ユイガ博士

目的……? ワシがお前たちの組織に
加わることがシンブラックの目的と
どう関係するというんじゃ?

それは、私が直接
お話いたしましょう。

シンブラック

……。

シンブラック

初めまして、結賀博士。
私がシンブラックです。

サキガケ博士

つづく。

ユイガ博士

白衣がベタベタじゃまいか!?

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