吸血鬼が笑う。
あなたは……
まさか……
うん、俺は吸血鬼だ。この身体は借り物だけど気に入っていたんだよね。君なんかに喰われずに済んで良かったよ。
そんな、吸血鬼だなんて……
君は目障りだけど、君の部下たちには美味しそうな子たちが多かった。何人か頂くよ
あ……
君はいらない。君は男のエキスを吸っているから美味しくないだろうからね。俺は我慢したんだよ。現れる美女たちから美味しそうな血の匂いがするんだもの。だから何人かは飲んでも良いよね
吸血鬼が笑う。
は……はい
オト姫は震える声で頷いていた。
相手の方が強い。
それに気づいてしまった。
殺されるかもしれないという
恐怖で身体の震えが止まらない。
どうして、
吸血鬼なんかを
ターゲットにしてしまったのだろう。
村の平凡そうな男を選んで、
あの亀を接触させた。
オト姫が彼を見つけた、
「あの時」は
まだ平凡な村の青年だった。
その後で青年は
吸血鬼に喰われたのだ。
そのまま、肉体を奪われた。
その後
亀と出会った。
彼はオト姫を見ていない。
側にいる亀の髪を撫でる。
……
君は来てくれるよね
はい
亀はうっとりとするように
微笑んだ。
それだけで、
彼は幸せだった。
め で た し。
め で た し。
the END
これで、良いのか?
闇の向こうで
誰かが叫んでいた。
その声は
自分のもののようにも思えた。
幸せそうな二人ではないか
玉座に座る彼のまわりには
虚ろな目の女たち。
これで、良いのか?
………良くない……
彼は首を横に振る。
彼女たちは、
彼の魅了にかかっているだけ。
ならば、チャンスを与えよう
チャンス?
、
前にも似たようなことが
あったような気がする。
それも、つい最近に。
声は続ける。
この結末に引き返すことは出来ないが、やり直すかね?
……ああ
つづく