彼は箱に手を伸ばす。

ウラシマ

俺が選ぶのは……小さな箱だ

 箱の蓋を開く。
 もくもくと煙が上がった。

ウラシマ

ゲホゲホゲホ

ウラシマ

ここは………

海?















         砂浜……














ここは 地上?

いつの間に、
海底から出て来たのだろうか。

ウラシマくん、み~つけた

次はウラシマくんが鬼だね

女の子たちが
彼を取り囲む。

みんな、好意的な視線を
向けている気がする。

ウラシマ

ウラシマ?

ウラシマくんは、ウラシマくんだよ

ウラシマ

そうだった。俺はウラシマ太郎。このウラシマ島の主。

そうだ

俺の名は

ウラシマ太郎だ!!

違う!!

ウラシマ

ここは、俺以外は女の子しかいない。夢の島。パラダイス・ビーチ

ウラシマさーん

ほほほほほ

ああ、ずるーい

ウラシマ

喧嘩するなよ、みんな撫でてやる

彼は集まる女の子たちの
頭を撫でまくる。

撫でている彼は幸せそうで、
撫でられている女の子たちも
幸せそうだ。

ウラシマさま、素敵なお髭

ウラシマ

髭だと? 俺のどこに髭が

海面を見てください

ウラシマ

おおお 髭だ

ウラシマ

髭?

 

違う!!

頭の向こう側で、
もう一人の自分が否定していた。

こんなのは、違う

ウラシマ

こんなのは、違う

ウラシマ太郎は、
突然走り出すと崖の上から
海面に向かって飛び込んだ。

え? あ? ウラシマさーーーん

背中では女の子たちの
悲鳴が聞こえていた。

ウラシマさん、大丈夫ですか?

ウラシマ

……

心地の良い声に振り返ると、
同時に視界が暗転した。

つづく

pagetop