リザード

 コフィンの言う通りリザードの動きは速かった。

 それに真正面から対応したのはジュピターだ。

ジュピター

ハル!
さっきと一緒だ!
オイラが足をやる!

 俊敏に動くリザードと交差するジュピターは、宣言通りにリザードの右足を切り裂いた。息も付かぬ間にジュピターの剣が翻る。

 切り上げは腰から背中を切り裂き、次の一撃は長剣で受けられてしまった。

ハル

足と背中に食らって
普通受けるっすか!?

ジュピター

いけぇっハル!

ハル

分かってるっす!

ハル

は、速いっす。
ジュピターから
ダメージ食らってるのに……

ユフィ

ジュピター前!!

ジュピター

お前がくるのは
分かってたぞ。

ウェルキア

 コフィンがウェルキアと呼んでいた腕が六本ある魔物だ。その三本同時の剣撃をジュピターは危なげなく躱した。

ジュピター

ユフィ。
コイツはオイラに任せてくれ。

ユフィ

持ちこたえて!
直ぐに援護するわ!

 ダガーを構えるユフィは、リザードとの間を詰めながら返事をする。そしてハルに指示を飛ばした。

ユフィ

私が引き付けるから
隙を突いて!

ハル

次は逃がさないっす!

 リザードは負傷しながらも猛然とユフィに襲い掛かってくる。ユフィは左右に回避しながらハルの攻撃を待っていた。

ハル

あ、当たらないっす。

 リザードの速さに追い付けないハル。隙を突いたと思う攻撃も躱されてしまうのだ。



 足と背中を負傷し、挟撃されても攻撃を避けるリザード。ユフィとハルは焦りを感じずにはいられなかった。

ユフィ

え!?

 回避に専念していたユフィだが、リザードのフェイントにかかり、荒っぽい横蹴りで吹き飛ばされた。

ハル

ユフィ!!

アデル

ユフィさんは私が看ます!
ハルは魔物を止めて下さい!

ハル

絶対に……
絶対負けないっす。

 一対一になったハルは、鬼義理をリザードに構え気持ちを昂らせた。

 渾身のハルの攻撃は――

 ――今迄と同じ。








 虚しく空を斬るばかりだった。

ハル

っく……

 手負いの相手を仕留められないハルは、自身の力のなさを痛感させられていた。


 早くこの敵を倒さないと、後ろからのそりと迫りくるアンデッドに対応出来なくなる。ジュピターも危険な敵と一人で戦っている。ジュピターなら……この敵を直ぐに仕留められるのではないか。


 そんな事が頭をよぎり、切っ先が大きくぶれた。




 その一瞬の隙を逃さなかったリザードは、斜め前に踏み込んできた。

 グジャッ!

 鈍くハルの耳に響いた音。それはリザードの背中の傷口から聞こえた音だった。

ハル

あ……

 その音の正体は、ダナンが投げつけた岩だった。そうハルが理解した時には、二投目の岩が投げられる時だった。

ダナン

しつけぇぞ!
これで
くたばれや!

 動きの止まっていたリザードの頭に直撃する岩は、灰色の液体を飛び散らせそのまま床に転がった。リザードは大きく円を描くように頭を揺らした後、力なく前のめりに倒れた。

ハル

旦那ぁっ♪
助かったっす。

ダナン

礼を呑気に言ってる
場合じゃねぇぜ。
次の奴は……

アンデッドアクス

ハル

デデデデカイ!
って、
く、臭いっす。

 後方にいた敵・アンデッドアクスは、ダナンよりもはるかに大きく、何よりも腐敗臭を撒き散らしていた。鼻から突き抜ける様な嫌な予感は、ハルの身を分かりやすく仰け反らせた。

 ~航章~     66、vs リザード

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