ロココ

う、うぅ……
な、なんで……

 単身でブロンクスに相対したハルの一撃は、心臓の位置を捉えていた。ドロリと噴き出す灰色の液体。ジュピターに切られた傷もあり、人間ならとっくに死に至っている。

 しかし、ブロンクスは更に大剣を振り回してきたのだ。

ハル

あ、危なかったっす。
偶然避けれたっすよ。

ダナン

野~郎~!
不死身かよ。
うおっ、ハンマーが
グシャグシャじゃねーか。

ジュピター

いちちち、
なんて打たれ強いんだ。

 前衛三人がそれぞれの位置で、ブロンクスの打たれ強さに辟易としている。ダナンのハンマーはブロンクスの大剣を受けて、使い物にならなくなってしまったようだ。

ロココ

ユ、ユフィさん!!
大変です!!
また来ます……
別の魔物が近付いてきています!

ユフィ

!!

ジュピター

ハル。
二人で一気に
コイツを攻撃するぞ!

ハル

わかったっす!
いくっすよー!

ユフィ

待って!

 鞭を失ったユフィは、ダガーに手を掛けながらはっきりと伝える。

ユフィ

撤退します。

ジュピター

何言ってんだ!
あともうちょいだろ!

ユフィ

あなたも怪我をしてるし
ダナンの武器も
使い物にならないわ。

ジュピター

これくらい怪我のうちに
入らないだろ!
やれる!!

ユフィ

この敵も未知数だし
次の敵も勿論未知数。
一刻の遅れが
取返しのつかない
状況に繋がるわ。

 ブロンクスの次の攻撃をバックステップでかわすジュピター。

ユフィ

ジュピター!
お願いっ!!
今は我慢してっ!

ジュピター

グッ、ゥゥゥ~

アデル

見えました!
二体います!

ユフィ

ジュピター!!

ジュピター

チッキショォ……

 今迄で一番大きく振りかぶったブロンクスは、ジュピターに大剣をおもいきり振り降ろしてきた。

ジュピター

クッソォ~……

ハル

ジュピター……

 ジュピターはブロンクスの攻撃を鮮やかに躱していた。そして反撃の剣をブロンクスの右足に放った。

 明らかに移動を鈍らせたブロンクス。ジュピターは歯痒い思いを押し殺し、指示通りの撤退を選んだのだ。

ハル

やっぱり凄いっす。

ユフィ

即座に撤退!
入口の方に走って!

 ガーディアンゲートから来た通路を走るハル達。通常、撤退には危険が付き纏うが、ジュピターが足を攻撃してくれたお陰で、逃げ切る事が出来た。

ユフィ

振り切ったみたいね。
もういいでしょう。

 ユフィの言葉に反応し、全員走る足を緩め、息を整える。

ロココ

はぁ、はぁ……

アデル

ふぅ……
ここは分かれ道の
少し手前ですね。

ハル

無茶苦茶打たれ強い
魔物だったっす。

ダナン

それにパワーも
侮れんぜ。

 肩で息をするロココの隣で、ダナンはひしゃげたハンマーに、もう一度目を落とした。

アリス

やれやれ、あんな小者に
ケツまくってんじゃないよ。

ジュピター

ッグ!

ハル

小者っすか?

コフィン

いえいえ、良い判断でした。
自分達の戦力を
分析した上での判断です。
ですが……

アデル

コフィン

撤退時には
危険がつきものです。

ロココ

あ!

ユフィ

ロココ、どうしたの?

ロココ

前方に魔物です!!

ユフィ

!!

コフィン

よくあることです。

ジュピター

次は必ず倒す!

ユフィ

ジュピター単独で動かないで!

コフィン

先頭の素早いリザードと
後方のアンデッドアクスは
なんとかなるでしょうが、
六本の腕を持つウェルキアは
まずいですね。
残念ながら…………

ユフィ

全力で先頭のリザードを
集中攻撃!
数を減らさないとまずい!
敵の攻撃は私がなるべく
引き付けるわ!
ダナンは
アデルとロココを守って!

ハル

いくっすよ!

ユフィ

ロココ。
魔気が溜まり次第、刻弾を。
温存したまま生き残れる
相手じゃなさそう。

 ~航章~     65、苦戦

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