工場の奏でる賑やかな交響曲。

見学に来た子供たちが耳を覆いたくなるような騒音も、ここに勤める者にとっては耳慣れた子守歌のようなものだ。

だが、それも今日で終わる。時代の流れに取り残された者たちの最後は、静寂をもって終幕となる。

その総指揮者たる老人は、今感慨深げに楽器たちの労をねぎらっていた。

ユイガ博士

フム……。

作動油はしっかりさされている。整備は万全。異音などするはずもない。

歩きなれた通路をしっかりとした足取りで、老人はまっすぐに進む。

目的地は、工場の中心部。そこで待つ者に会うために。

扉が開くと、そこで待っていた者の一人が老人に話しかけた。

チャーリー

オカエリナサイ、博士。

ユイガ博士

ただいまチャーリー。
何か変わったことはないか?

チャーリー

変ワリアリマセン。ワレラガ姫サマニモ変化ナシデス。

ユイガ博士

そうか……。

ゆーま

……。

ユイガ博士

……。

チャーリー

……。

ユイガ博士

……ダミー人形たちの出荷を急がせよう奴らがいつ、ここをかぎつけてくるかもしれんしな。

チャーリー

ワカリマシタ。

ユイガ博士

な、なんじゃ、なにが起きた!?

チャーリー

警告! 警告! 工場内ニ侵入者ヲ確認!!迎撃態勢ニ入リマス!!

自動砲台

複数ノ動体ヲ確認。動体予測完了。  攻撃開始。――外レ。第一次防衛ライン突破。敵ノデータヲ送ル。

自動砲台

同期完了。誤差修正完了。攻撃開始。 ――外レ。第二次防衛ライン突破。  敵ノデータヲ送ル。

自動砲台

同期完了。誤差修正完了。攻撃開始。 ――外レ。第三次防衛ライン突破。  敵ノデータヲ送ル。

自動砲台

同期完了。誤差修正完了。攻撃開始。 ――外レ。最終防衛ライン突破。   敵ノデータヲ送ル。

チャーリー

最終防衛ラインガ突破サレマシタ!
モウスグココヘヤッテキマス!
博士、撤退シテクダサイ!!

ユイガ博士

何というスピードだ、速すぎる!

左様。いかなる守りも我らシンブラック財団特殊部隊にはないも同然でござる。

ユイガ博士

だ、誰だお前は! どこから現れた!?

これは失礼。拙者パープルと申す。  任務中ですのでコードネームなのは  ご勘弁を。我々がここに来た理由は察しはついていると思いますが、結賀博士?

ユイガ博士

くっ……。まさかあれを完成させて
いようとはな……。

博士を連行するのだ。丁重にな。

四天王

はっ。してこの人形の数々は
いかがいたしましょうか?

この工場にあるものはすべて運び出し、検査課に回せ。ネジ一本も残すな。

四天王

工場の防衛システム制圧完了。
対人ドローンも沈黙しました。

チャーリー

……。

四天王

出荷前の製品のすべてを押収。
工場のデータとともに引き上げます

ゆーま

……。

四天王

工場の周囲に異常なし。
いつでも出発できます。

よし、見張りを残し撤収!

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