蓮蛇さーん

蓮蛇を呼ぶ奏の手には鮮やかな色どりの箱。
そして漂う甘い香り。

やあ奏さん。
なんだかよい香りがするね。

実はですねー……。
ポンDEリング買ってきました。

じゃーん、といいながら奏が箱を開いて見せた中には、玉を連ねて環にしたような茶色い菓子が入っていた。

もしかして、食べさせてくれるのかい?

興味津々期待マシマシという感じで尋ねる蓮蛇に、奏はポンDEリングを細かくちぎりながら差し出す。

はい。
もちもち食感が解らなそうだったので是非是非。
ただ丸ごとだと蓮蛇さんのお口には大きすぎるのでちぎりますけどね。

玉の一つ分をさらに三つほどにちぎって蓮蛇の前に差し出す奏。
蓮蛇は嬉々としてそのかけらを食べる。

お、おお……んむ……もちもちというのはこういう感じか……。

ちょ、え、あ!?
それでいいんですか、蓮蛇さん!

思わず声を上げる奏だが、それもすべてはポンDEリングの欠片を噛むことなく丸呑みしていく蓮蛇のせいだ。
これで食感など解るのだろうか……?

あの、解ります?
食感。

ふむ……。
飲み込むと体の中がふわふわと……しかし餅のようにべと付いて引っかかったりしない……。
これはいいものだ……。

あ、解るんですね。
それに好感触っぽい。

うん。ありがとう奏さん。
とても美味しかったよ。
お礼になにか神様に伝えてほしい事とかあるかな?
ある程度ならご利益を期待できると思うよ。

え、そんなポンDEリングくらいで!

そんな大層なお願いは聞けないから。
ほら、言ってみて。

ええとー……うーん、うーん。

しばらく唸った奏だったが、結局……。

……思いつかないや。
あ、そうだ。

うん?

皆がちょっと楽しく過ごせるように、なんてのは?

蓮蛇が奏の言葉を咀嚼する。
それは神に聞き届けられるか否かを判断しているようで……。

そうだね。明日一日くらいなら、できるかもね。

じゃあそれで!

奏さん……欲がないね。

奏の無欲さを噛みしめて。
蓮蛇は彼女の芯が変わらないことを感じたのだった。

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